私がここ最近注目して追いかけているものの1つが
動物福祉の立場から飼育動物の“幸福な暮らし”を
実現するための取組みを表彰する「エンリッチメント大賞」。
エンリッチメント大賞
今回紹介する本
『クマが肥満で悩んでいます
〜動物園のヒミツ教えます』は
このエンリッチメント大賞の実施団体である
「市民ZOOネットワーク」のスタッフshirokumaoさんが
受賞した具体的な取組みを
コミックエッセイの形で取り上げ紹介する本です。
![]() | クマが肥満で悩んでます 動物園のヒミツ教えます (メディアファクトリーのコミックエッセイ) - sirokumao |
本を買うときには情報量的コスパおよび絵の資料的な
価値を超求める私。
そういう価値基準からいうと,めちゃめちゃ読みやすく
エンリッチメント大賞受賞園館の取組みを紹介したこの本は,
ほぼ既に知ってる内容ですぐ読み終わってしまう本…
なのですが,すごく人におすすめしたいと感じました。
●構成−エンリッチメント大賞受賞13園館の取組を厳選紹介
取り上げられている動物たちは
ライオン・ゾウ・キリンといった大型哺乳類から
物を言わぬテッポウウオ・マホロバサンショウウオといった
魚類・両生類まで13章。
集団生活や知能が高くてストレスと背中合わせということか
サルの仲間が3章,
動物園の動物のストレスの代表・情動行動
(同じ場所をぐるぐる歩き回る)の例として
連想される動物の一,二番手にくるクマが2章を占めています。
多くの園館で展示展示の工夫の進化が近年著しい
ペンギンは葛西臨海水族園,しものせき海響館,
長崎ペンギン水族館,埼玉こども自然動物公園(SCZ)
の4大園館がエンリッチメント大賞を受賞しているなか
SCZの「ペンギンヒルズ」がピックアップされています。
各章は
| 1.動物の紹介「ライオン どんな暮らし?」 「ニホンザル どこで暮らしてる?」等 2.本編マンガ エンリッチメントの取組み紹介 「敏感なキリンのストレスを軽減」 「ゾウの足を守るための施設の改善」等 3.教えてエンリッチメント! 取り組みを行っている園館の紹介 |
の3パート,2+6+2ページ構成。
※コアラの章だけは3のパートがありません。
2008年に埼玉こども自然動物公園(SCZ)が受賞していて
コアラ舎の絵や屋外放飼場がある描写などSCZと
思われますが,概ね他の園でも通じる話であるのと
SCZはペンギンヒルズの章で紹介されているからでしょうね。
●切り口ー非常に読みやすい王道
各章でテーマとなっている動物たちを主役に第三者目線で語る,ごくごく”普通”のスタイルで描き進められています。
「コミックエッセイ」とカテゴライズされていますが,第一人称になる著者=しろくまのshirokumaoくんは各話ちらちら登場するものの,フキダシで語る漫画の登場人物の形をとらずあくまで語りはナレーション的に淡々と語られます。わかりやすく・親しみやすくするための案内役キャラに喋らせる手法をとらないことでテンポよく読み進めやすい形になっていると思います。
また,エンリッチメントは動物園・水族館側,スタッフさんたちの取組みなのでエンリッチメント大賞などでも常に飼育側・専門家の目線で語られるわけですが,それがこの本ではうまく第三者目線に変換されて,その動物についての知識がほとんどないような一般の人にもわかりやすく,エンリッチメントとは何かということからていねいに説明されています。
shirokumaoさんは市民ZOOネットワークのスタッフとしてエンリッチメント大賞の取材をされた(一次書類選考を通過した応募に対してヒアリング調査をされたのち審査委員会で賞が決定するのですね)とのことで,飼育者側の専門的知識や取り組みを第三者目線で一般の来園者にわかるよう,必要かつ興味深い情報を整理・精選してわかりやすくまとめていて,とてもすばらしい本だと思います。
●絵柄−シャレオツイラストチックだが,正しい
切り絵のように色を重ね合わせて描かれた
輪郭のないイラストと
写真の輪郭をラフにトレースしたような
ざっくりした筆致の漫画本編の絵
めっちゃイラストチックでシャレオツな雰囲気の
絵柄に感じましたが,動物が単なるモチーフ扱いでなく
生き生きとその形や動きが伝わってくる。
動物のことをよく見ていて
「わかっている」絵だと思いました。
たとえどんなに素敵な絵を描く絵師さんや
何十年と描いてきたプロの人でも
生き物を描いたら(参考写真とか見ても)
とんでもない間違った絵を描く人はざらにいますので
文字で書かれている内容がどんなにすばらしくても
「わかっていない」絵が多かったら台無しということもあり得るんですよね。
少ない線・要素で伝わる絵,
正直うらやましいです。
●好きな章・ページ
どれもまんべんなく見て楽しく興味深いのですが,
到津の森公園(福岡県北九州市)のニホンザルについて,
まだ行ったことがないので行きたくなったのと
「緑あふれるサル山」を目指すコンセプトが
サル山=コンクリの塊というイメージが凝り固まってる
自分の認識を思い知らされました。
あと,今,日本有数のフンボルトペンギンの楽園と
なっているSCZのペンギンヒルズも導入当初は
ペンギンたちが警戒してしまい,巣箱利用し始めて
もらうためにいろいろな方策を要したという話が
感慨深く,考えさせられました。
●おすすめ度
ルビの基準がよくわからない点だけが(小学生でも
読めるというには)ひっかかってしまいましたが
動物園・水族館の仕事に興味のある子のご家庭とか
自治体・小中学校の図書館・学童の本棚などにも
ぜひおすすめしたいです。
高校生以上の大人にも(かなり女性向けのタッチですが)
絵柄がきれいでかわいいですし
多くの人がまだ知らない動物福祉の観点や
動物園・水族館の実情などが読みやすく頭に入りますので
一読をおすすめしたいですね。
![]() | クマが肥満で悩んでます 動物園のヒミツ教えます (メディアファクトリーのコミックエッセイ) - sirokumao |
●気になったところ
フンボルトペンギンの分布域を地図で表すのに
黄緑とオレンジで塗分けている(p.117)のが
色覚変異の方から見て大丈夫かなと思ったところと,
有名漫画や番組のパロディが何か所か入ってくるのが
ちょっと「(;^ω^)」でした(いや大丈夫だと思いますけどね)。
余談
私が講談社さんで描かせていただいたとき
有名人や他作品ネタはNGだったんですけど
(当ブログで描き始めたときはロバートとか
マッハ文朱さんとかどこまで通じるんだよってネタ普通にしてました)
著作権もさることながらそういうネタで笑いをとるのが
ブルーバックスのレーベル的に合わないという
面が大きかったと思います。
![]() | 腸よ鼻よ 01 - 島袋 全優※自らの難病(潰瘍性大腸炎)闘病生活を強烈に笑える読み物に仕上げた唯一無二のギャグエッセイ漫画。作中で有名漫画のパロディ(画風とセリフ)が出てきて,その絵面自体も面白いですが元ネタが分かった瞬間に爆笑させられます。 |
■カテゴリ「おすすめ本」
http://ddaisuke.seesaa.net/category/3170873-1.html
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