2007年11月21日

ヒトの皮膚から万能細胞作製に成功!

こぉりゃあ,すげぇって!



今の段階で軽々にノーベル賞級だとかは言えませんが,
教科書の内容を変えるだけの大きな意味のある成果ですね。
> 米国の研究の主著者である米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のジェームス・トマソン(James Thomson)教授は、新技術が非常に単純で普通の研究所でも比較的簡単に再現することができるものだと指摘。「この技術により政治的論争が排除できるため、資金調達も進みそうだ。研究は加速度的に進むだろう」と語った。

> ホワイトハウスは今回の発見について、「科学の高尚な目標と人命の神聖さの双方を傷付けることなく、医学的問題を解決できる方法」と、称賛した。

> ウィスコンシン大学の研究チームと京都大学(Kyoto University)の山中伸弥(Shinya Yamanaka)教授率いる研究チームはそれぞれ同時期に、レトロウイルスを使って4種類の異なる遺伝子をヒトの皮膚細胞に導入し、人工多能性幹細胞の作製に成功した。京都大学チームは5000細胞から1個の人工多能性幹細胞の作製に成功。一方、ウィスコンシン大学チームは1万細胞で1個だが、京都大学が利用したがんを誘発する可能性のある遺伝子は利用していない。


こちらのニュースソースはAFPなのでアメリカ寄りの報道ですが,
NHKではクローンヒツジ「ドリー」で知られるウィルムット博士が
「日本の研究のほうが自分たちのそれより優れたものであると信じている」と
コメントをリリースしてこのテーマから撤退したことを紹介し,
「ニュースウォッチ9」の枠で大阪放送局スタジオに
京大の山中伸弥教授を招いて生インタビューを放送していました。

「(日米ほぼ同時の発表になりましたが,この研究テーマについては
 激しい国際研究競争がくり広げられているんですね)
 前回の発表の際には,マラソンに例えると1kmくらい離した独走状態
 だったが,ハーバード大の研究チームがすぐ後ろまで追いついてきた。
 そして,今回,違うところがすぐ隣を走っていたという状況。
 一度追いつかれてからではしんどいのでさらに頑張っていかなければと
 思っています」
「こういう競争の状況は研究者にとっては非常にストレスなんですが
 研究の成果という点では非常にスピードアップにつながります。
 5年後と言われていた成果が3年後2年後に近づいてくる
 ということもあり得る」
「(医療分野への応用で)一番大切なのは安全性。(この幹細胞から
人工臓器がつくられたとして)人に移植してもがんが生じないか
安全なものでなければいけない」


両チームの技術とも、遺伝子を運ぶために用いた(ベクター=「運び屋」ですね)ウイルスのコピーによる突然変異の危険性があるとのこと。そのため,次の到達点としては,この危険性を回避するためにレトロウイルスに頼らないで皮膚細胞を幹細胞に変える遺伝子を刺激する方法を確立することだそうです。

米 “万能”細胞に異例の称賛(NHKオンライン 11月21日 9時20分)
> 20日出された声明で、ホワイトハウスは、「ES細胞を作るにあたって受精卵を壊さなくてはならないという従来の研究が抱えていた生命倫理上の課題を解消する重要な進展だ」とたたえたうえで、ブッシュ大統領は倫理上問題がない範囲内で行われるこうした科学研究を支援するとしています。ブッシュ大統領は去年7月に、受精卵から作ったES細胞の研究に財政支援を行う法案に対し、就任以来初めて拒否権を発動するなど、生命倫理上の課題が指摘される研究には否定な立場をとってきました、ホワイトハウスが科学的成果に対し即座に声明を出すのは異例のことですが、生命倫理の観点から妊娠中絶などにも反対するキリスト教保守派の考え方に立脚しているブッシュ大統領の政治姿勢をあらためて示したものといえます。

ヒトES細胞を使った研究は,1人の人間になることができる“受精卵”(高校生物では胚という呼び方を学習しますね)を材料にする必要があるため倫理的問題から他の国が二の足を踏んでいる状況だったんですよね…。

つい近年,日本の近くで「世界で最初にヒトクローン技術を成功させてノーベル賞を」なんて国を挙げて大騒ぎした挙げ句,データ捏造が発覚して国民的英雄だった教授が失脚するというドタバタ劇がありましたが,あの研究自体がノーベル賞からほど遠いテーマだった(倫理的問題から他国の研究者が競争に参加していないし,成功したとしてその技術を応用・発展させることもできない,テーマや手法自体に独創性があるわけでもない)のと比べると,今回の皮膚細胞由来“万能細胞”は数ランク上をいくすばらしいものですね。

「えぇ?!そんなことできるの?!」と世界中に与えるインパクトの大きさ,
技術的に簡単で,前述のコメントのように競争が激しくなる一方で
再生医療の飛躍的な発展に大きく貢献できる可能性の大きさ…

まさにノーベル賞も夢ではない研究だと思いますし(少なくとも十数年後くらい先になるでしょうが)
教科書の内容が変わりますよ。
今ES細胞について扱われている「バイオテクノロジー」の項目が収録されている『生物II』は改訂されたばかりですので,次に教科書が新しくなるのは,現在の「ゆとり教育」学習指導要領が改訂され教科書も刷新される平成26年(小学校が平成23年,中学校が平成24年,高1科目が平成25年,高2科目が平成26年)w
その1年前に各高校での採択選考,さらに1年前に文科省による検定がありますので教科書の執筆・編集があるのは平成22〜23年頃ということになります。
その頃には,研究がひと区切りつくところまで進展して,誰の名が教科書に,ひいては科学史に名を残せるのか決まってるかもしれませんね。
山中先生と研究チームの皆さん,頑張れ!

※学習指導要領が改訂されるのはいつなのか−
文部科学省教育課程課(教育課程部会事務局)からのお知らせ(平成19年11月9日)

2007/11/21-22:46 「飛躍的な進歩」=日米の万能細胞研究で英メディア 【ロンドン21日時事】

Induction of Pluripotent Stem Cells
from Adult Human Fibroblasts
by Defined Factors
(PDF)
 (『Cell』電子版に掲載された山中教授チームの論文)


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関連図書
ES細胞―万能細胞への夢と禁忌 (文春新書)
 (大朏 博善 (著)/文藝春秋 (2000/05) →Amazon
 7年前の本で古いっちゃ古いですが,知識としては十分。

ヒトES細胞 なぜ万能か (岩波科学ライブラリー)
(中辻 憲夫 (著) /岩波書店 (2002/06) →Amazon

絵とき再生医学入門―幹細胞の基礎知識から再生医療の実際までイッキにわかる!
(朝比奈 欣治、立野 知世、吉里 勝利/羊土社 (2004/03) →Amazon
ラベル:皮膚 万能細胞
posted by ドージマ・ダイスケ at 23:35| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(3) | ◇生物番組・ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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