2007年11月08日

突っ走るネズミ



> 米オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)のRichard Hanson教授によると、このマウスは、分速20メートルの速度で6キロほどの距離を最長6時間走り続けることができる。

NHKのニュースで紹介されていた際の放送によれば
分速20mのベルトコンベアーで,通常のマウスは200m分(10分間)
走ったところで脱落したのに対し,
遺伝子操作した「スーパーマウス」は6時間も走り続けたとのことでした。
すごい差だな〜!この差って何なの?!

※分速20mって時速にすると1.2kmですから
 訳文の「6キロほどの距離」は6時間ではなく5時間分。
 6q走るマウスと最長6時間走るマウスが別個体なのか…?
 原文はマイル計算かなにかで訳す際に換算・端数処理する際に誤差が出たのか
 (時速1km=分速16.7mなら内容は一貫します)?
 ちょっと意味がよくわかりません。


> スーパーマウスは、野生のマウスよりも60%多く食物を摂取するが、それでもスリムな体形を保つことができる。また、寿命も長く、生殖期間も通常より長い。このマウスは激しい運動の際に蓄積される乳酸が極端に少ないため、激しい運動に耐えることができるという。

いいことずくめ!
たいてい「運動能力が高いとその分寿命が短い」ってトレードオフの
関係になりそうなものだと考えがちですが…。
(体細胞クローン動物も寿命が短いですしね)
大飯食らいでもこの記事を読む限り,
コストパフォーマンスは高い感じですし。
「6時間ぶっ続けで走れる分,寝るのも10時間ぶっ続けなので
1日トータルで考えると通常マウスと大差なし」
とかいうオチだったら笑えるのですが
(ネズミに限らずヒト以外の動物は睡眠と覚醒状態を1日の間に
 途切れ途切れに繰り返すので,そういう意味でも「6時間走り続ける」
 というのは驚異的)

NHKでは「この遺伝子操作技術のヒトへの適応は考えるべきではない」
記事によっては「ヒトへの応用は倫理的問題だけだ」
という言葉で最後を締めています。
おそらく直訳だと後者に近いんでしょうが,だいぶニュアンス違いますよね。
こんなすごい遺伝子があるなら自分も発現させたい
って思っちゃいますけど,そういう人間は自然状態では存在しない
(もともとヒトが持っている遺伝子ではない)んでしょうね。
代謝系からして違うようですから…。
また,この手の遺伝子操作,遺伝子組換えするのは受精卵段階(※※)
ですから,ヒトに応用するとしても今こうやってこの記事を読んでいる
人たちの,遺伝子を組み換えて「スーパーヒューマン」にするのは
最初から無理なんですよね。残念。
動物実験にせよヒトに使うにせよ,本人の希望を確かめることは
できないってことで,そのへんがまた病気の治療と違って
命を操ることの「倫理的問題」が生じるんですよね。

※※具体的にはES細胞に目的遺伝子を組み込んで培養し,
 この遺伝子組換え細胞を初期胚の中に入れて発生させ
 遺伝子組換え細胞の混ざったキメラ個体をつくる。
 そうすると,この個体がつくる生殖細胞(精子or卵)には
 遺伝子組換え細胞由来のものが含まれることになるので
 これを使って遺伝子組換え個体を誕生させることができる
 −ということになります。あーややこし。 


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 (山田 一之 (編集) /ナカニシヤ出版 (2003/12) →Amazon

この手のマニュアル本といえば洋土社という印象があるのですが
直接ジーンターゲティングマウスの技術解説をした本は絶版本ばかりのようで…
最近は基礎的・入門者向けの本に力を入れているようです。


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posted by ドージマ・ダイスケ at 05:46| 東京 晴れ| Comment(2) | TrackBack(1) | ◇生物番組・ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
遺伝子雑作をしなくても、
この酵素の発現を誘導する化合物を見つけたら、
疲れない薬??ができそうですね。
現実的には、代謝亢進ということで、抗肥満薬とかに使えるかも。

もちろんドーピングには引っかかるだろうなぁ。応援ポチ!

Posted by 薬作り職人 at 2007年11月11日 00:28
薬作り職人さん コメントありがとうございます。

異様に疲れない体質で,それが生まれつきであることを証明しないとドーピングにひっかかる(血中酸素濃度が高すぎる?か何かで)選手が日本にもいるという記事を見たことがありますが,一遺伝子一酵素の1遺伝子だけでこれだけの劇的な効果が得られるのならすごい話ですね。

あと,気になるのが,乳酸がたまらない体質だと
疲労後の筋肉増強があるのかどうか?
小動物ですと体格・筋肉量や力はトレーニングより
生まれつきの要素が大きいと思いますけど
人間の場合はどうなのか?実は乳酸などたまらなくても筋肉が太くなるといった,トレーニングと筋肉量増加の関係・しくみについて色々なことがわかる手がかりとなりそうな変異体です。

Posted by ドージマ at 2007年11月12日 12:57
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