2007年09月03日

生物部百物語(1)副部長編 あとがきのあとがき

番外編の『生物部百物語』,副部長編は小泉八雲
(ラフカディオ・ハーン)の怪談から『おしどり』でした。

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八雲は日本の昔話を著述する際に,単なる英訳ではなく
より真に迫る表現を推敲していた旨書きまして,
漫画で描きました『おしどり』の場合でも,
主役のキャラなどアレンジされていることを書きました。

で,今回副部長は“怖い話”として「おしどり」を選んだわけですが
八雲作品の怪談・奇談には,生き物が出てくるもっと怖い話は
ないのでしょうか?

これが,ないんですねぇ…
化け猫とか大蛇とか大ムカデとか,
人間をバリバリ食ってしまうような化け物の話は特に出てこない。
全般的に男女の愛憎がらみの話が多いように思います。

宿世の恋』は有名な「牡丹灯籠」の話,
因果話』は,死に瀕した大名の奥方が若い側室に
とりつく話(霊としてではなく体で!)
※以上2話は『霊の世界』収録
おかめの話』(『骨董』)は,死しても朽ちず,
毎夜夫のもとへ姿を現す妻の話。
和解』(『影』)は,出世のため何一つ落ち度のない妻を
離縁して身分の高い女と再婚,京を離れた侍が,
元の妻を忘れられず任期満了とともに京に舞い戻り,
再会を果たすが…という話,
伊藤則資(のりすけ)の話』(『天の河物語』)は,
お露の霊から逃れようとした牡丹灯籠の新三郎とは逆に,
百年以上前に亡くなった平家の姫君の霊からの求婚を
受け入れ,十年間操を立てた後黄泉の国に旅立つ話。


『怪談』はこういった霊の話,怖い話よりも
怪しい話,物の怪の話が多いのですが,
人を食い殺したり遺体を食べに出てくる『ろくろ首
や『食人鬼』,有名な『雪女』は妖怪や化けた人間の霊で,
結局,げに一番恐ろしきは人間かという様相。
むじな(狢)』はタヌキでもアナグマでもなく
のっぺらぼうの話を「むじなに騙された」と言っているだけ,
安芸之介の夢』はアリの王国に婿として迎えられ23年間を
過ごす夢を見る話(その目の前で,安芸之介の魂と思われる蝶が
蟻の巣に引きずり込まれ,また出て戻って来たというくだりは
仏典を思わせます)。
『骨董』収録の『忠五郎の話』では毎晩,男を引き寄せて
竜宮城のお接待のような幻を見せてはその血を奪う
ガマが出てきますが,妖怪の正体が別にカエルでなくても
ドジョウでもミミズでも何でもいいかなという話
(原拠となっている『文藝倶楽部』収録の話は「蝦蟇の怪」
 と,タイトルで正体ばらしてますが,話の筋立ては
 八雲作品とほぼ同じ)
青柳の話』のように,旅の途中の若侍が
の精の老夫婦から娘を嫁にもらう話もあって,
さすが万物に魂が宿る八百万の神の国・日本と感慨深いものがあります。
この話,結構物語も波乱万丈で一途な友忠の行動が感動を呼びます。

こういったセレクションを通してみると,やはり日本人は
西洋人のように自然を敵対する存在,支配すべき存在として
見ていたのではなく,身近というか対等というか,
人間が自然の中で生活を営んでいたのだという思いを強くしますね。

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■関連図書
怪談―KWAIDAN 【講談社英語文庫】
 Lafcadio Hearn
 (→Amazon)
 122頁。耳なし芳一の話,雪女,おしどり,食人鬼,ろくろ首 等9編を収録。

Kwaidan: Stories And Studies Of Strange Things
(Classics of Japanese Literature) (ペーパーバック)
 Lafcadio Hearn
 (→Amazon) 176頁。Dover Pubns

怪談・奇談 (講談社学術文庫―小泉八雲名作選集) 1990/06
 小泉八雲著・平川祐弘編
(→Amazon)
 ハーン作品の中でも一般に親しまれている怪談・奇談42編を収録。
 さらに巻末に「ヘルン文庫」蔵本から翻刻した原拠30編も収録,
 原拠本とハーン作品との差異について解説がなされている。
 読んで,解説を読んで,もう1度読み返して3度楽しめる,
 知的好奇心的に超読み応えのある1冊。

小泉八雲集 (新潮社文庫) 上田 和夫訳(→Amazon)
 昭和50年の本ですが,『怪談』から14編,『骨董』から11編と
 代表作をほぼ網羅したほか,『知られぬ日本の面影』『心』
 などからエッセー的論文も収録しており,愛情豊かな目で
 日本を見つめた八雲の鋭いセンスが堪能できます。
 巻末に八雲の人と文学に関する解説と年譜を収録。

さまよえる魂のうた 小泉八雲コレクション(→Amazon)

「捨て子」たちの民俗学―小泉八雲と柳田國男 (角川選書)(→Amazon)
 柳田國男が幼い頃、妄想した虚構の母。小泉八雲が拘泥したジプシーの血筋。「捨て子」意識を持ち続けた二人の民俗学者が最後にたどり着いた世界とは。
posted by ドージマ・ダイスケ at 03:38| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 生物部員の雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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