『海獣学者、クジラを解剖する 海の哺乳類の死体が教えてくれること』(田島木綿子 著)
私が購入した版の増刷帯には
「電話1本で海岸に出動!」
「解剖は体力&スピード勝負」
「帰りの温泉で異臭騒ぎ」
「クジラをのせたクレーン車がパンク」
といったコピーが並び,お仕事エピソード本?と思わせるアピールがされていました。
これらのことが書かれたくだりもその場その時の様子が再現されておもしろく読み進められるのですが,それだけだったら私はわざわざ買って読むほどじゃないかな…というのが正直なところ。ですがこちらの本,海の動物たちの生物学的な興味深い話もたっぷり織り込まれています。
コククジラのボトムフィーディングとか
クジラの仲間の内臓は丸いとか
カイギュウ類(ジュゴン・マナティー)の肺の話とか
へぇって感じでしたね。^^
336pのボリュームたっぷりの本。7章構成で
1章 海獣学者の汗まみれな毎日
2章 砂浜に打ち上がる無数のクジラたち
3章 ストランディングの謎を追う
4章 かつてイルカには手も足もあった
5章 アザラシの睾丸は体内にしまわれている
6章 ジュゴン・マナティは生粋のベジタリアン
7章 死体から聞こえるメッセージ
と,5・6章はアザラシ・オットセイ・セイウチ・ラッコ・ジュゴン・マナティといった海生哺乳類(+鳥類ですがペンギンも)についての解説,1〜4章はクジラ・イルカ類のストランディング調査の話とともにさまざまな種類のクジラたちに関する話がたっぷり盛り込まれていました。調査方法にまつわる解説も興味深いですし,調査のエピソード自体も20年で2000個体以上調査されただけあって本当にさまざまな出来事があって飽きずに読み進められました。
(7章は海の生物に影響を与える地球環境の現状や変化について)
しかし,科博つながり,現役女性解剖学者つながりということで『キリン解剖学』を思い出す人も多いと思いますが,私みたいな情報を食べたくて本を買い求める層も含め,本をおもしろく読み進める魅力として,人間が描かれている(この場合は著者自身ですが)のは大きいなあと感じました。 |