2022年05月05日

【おすすめ本】内容みっちり『寝てもサメても深層サメ学』

今年に読んだ本でよかった本。
『寝てもサメても 深層サメ学』(佐藤 圭一 + 冨田 武照 著)


この本のなんたるかについては,まえがきを読めばしっかり言い尽くされている感があります。
いわく,近年サメの本が多く出ている状況下で執筆オファーを受けるのであれば「サメ図鑑」や「サメものしり本」ではなく「サメを研究する」という作業に焦点を当てる。研究者自身が本当に知りたいこと,興味を持っていることに対してどうアプローチしてきたかをざっくばらんに綴った本である,と。

しかし,研究する作業に焦点を当てる,といいつつも実際の内容は「サメ学」と銘打つだけあってサメという生物についての科学を起源・進化・系統から生態へとぐるりと一通りおさらいして,種数・大きさ・歯や鱗など体の構造・生殖など誰もが興味をもつことがらについてがっつり解説されています(写真や図が豊富でフルカラー(208p)なのがなんといってもうれしい!)。
持ちネタ(知識)として吸収するにはかなり読み込まないといけないのでひとまずはざっと読み通しましたが,それだけでも飛び込んでくる知見の数々による刺激で元がとれます。サメについてちょっとはかじったつもりの人でも新鮮な気持ちになれるし,読み物的に書かれているものの教科書として知識を整理できる1冊だと思います。

特に4章のうち1章を占めている第3章「サメの複雑怪奇な繁殖方法」はサメという生き物とそれを研究することの奥深さを感じさせました。脊椎動物のなかでは原始的な動物と思われがちなサメも4億年の進化の歴史を重ねて今があるんだなと改めて実感しました。

科学というのは研究が進めば進むほど明らかになっていない事柄が出てくるもので,それぞれの事柄は,どう研究されてきてここまでわかっている・こんなことはまだわからないといった視点で解説されています。最大のサメ・ジンベエザメの大きさ1つだけでも12m〜20mの説があり,この本で「13〜14mになる」とした根拠について筋道立てて解説されます。このような1つ1つの事柄に関する解説を追っていくことで最新の知識を知るとともにサメやその関連のニュースに接したときにその先に思いをはせる目線が身につきそうです。発刊から1年近く経つ今,それぞれの事柄についてどんな発見があったかなどんな進展があったかなと思いを巡らせるライブ感がありつつもこの内容の濃さはなかなか古びないと思います。


沖縄美ら海水族館の研究機関としての価値はほんとうにかけがえのないものだと思います。










posted by ドージマ・ダイスケ at 13:57| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【おすすめ本】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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