2022年02月27日

【読みました!】小学生たちの突破力!『ヒルは木から落ちてこない ぼくらのヤマビル研究記』

近年「小学生の研究が常識を覆した」というニュースをしばしば目にするようになりました。
そのひとつ,「登山客を襲うヤマビルは木の枝から落ちてきて首筋に吸い付く」という俗説を調査・実験で明確に否定してみせたのが三重県で活動する子どもヤマビル研究会(ヒル研)。
その活動や成果が本になっていると聞き,購入して読んでみました。


60年代かと思うような装丁ですが,2021年9月発行です^^;

300ページに及ぶボリュームある本でしたが,コーディネーターとして子どもたちを導いてきた樋口大良先生によって,初期の活動からの歩みが子どもたちとの会話を交えて小説のように生き生きと語られているため,すらすら読めました。(研究の記録はともかく,移動中の会話とかいったいどうやって再現できたんだろう…)

ヤマビルって,専門の研究者がほとんどいなくて謎の多い生物で,ヒル研の研究テーマはかなり多岐にわたるんですね(そして伝染病を媒介しないという点で小学生でも注意すれば扱える)。
採取方法,生育活動に適した条件や飼育方法,生殖,臓器のつくり,獲物を感知する能力,移動能力が非常に弱いのに特定の場所に大量発生する理由,鈴鹿山脈の藤原岳には多いのに御在所岳には出てこない理由…
さらには研究結果を発表しても信用しない人を納得させるための追加調査やプレゼン能力まで!

この「ヒルが木から落ちて来るか否か」問題は,さまざまな試行錯誤を経たものの人気テレビ番組でも追試されて(1度のロケで)証明されたようにかなりはっきりと結果がわかるテーマでしたが,フィールドを対象とした調査って「いる・いないって,いないのはどうやって証明できるの?ちゃんと調べたの?」という疑問が頭をよぎるもの。しかしこの本を読めば,ここまで経験を重ねて調査や捕獲を心得てるこの子たちがこの調べ方でいなかったというのならそうなんだろうなと納得できます。

2011年にスタート,休止期間を挟みつつ毎年3~6人の小中学生が研究・調査してきた活動。
集中力が続かなくて調査や作業を切り上げることになったりとか逆に時間を忘れて実験に夢中になったりと時間の感覚とともに活動の歩みがつづられているところも印象に残りました。
ヒル研初期のメンバーはもう成人している年齢なんですよね…科学的な考え探究する思考や研究の手法を身に着けたOBOGがどのように成長しどんな道に歩んでいったのかとも思いました。

ヒル研の調査・実験によって裏付けられたり発見されたりした数々の知識はとても興味深く,山に登る際には実践的に役に立つもので,そのいくつかについては自分でも推理しながら読み進めることで謎解き的にも楽しめました。
また,さまざまなことが明らかになることでまた新たな疑問(テーマ)が見えてきたこともまた興味をそそられる,読み応えのある1冊でした。


山と渓谷社 ヤマケイオンライン YAMAKEI Online 
連載「子どもヤマビル研究会」によるヒルの生態研究
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=50

子どもヤマビル研究会の様子。(2021/02/01up)


みちのく潮風トレイルフォーラム

令和4年(2022年)3月13日(日)13:30〜15:30
「子どもヤマビル研究会」の研究発表とともに,ヤマビルと共生しながら歩き旅を楽しむにはどうすればいいかを皆さまと一緒に考えていく催しとのことです。











posted by ドージマ・ダイスケ at 21:25| 東京 ☀| Comment(0) | 【おすすめ本】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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