2020年12月06日

オンライン!エンリッチメント大賞2020授賞式(前編)

環境エンリッチメント(environmental enrichment)
ー「動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策」

2002年から毎年開催され,昨年は東大弥生講堂で開催された
『エンリッチメント大賞』授賞式。
私もその場で熱気を体感しましたが,今年は12月5日(土)にオンラインで開催されました。

市民ZOOネットワークエンリッチメント大賞2020〜YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UClYn_MSOvm7q1vxkKt6dEqA

当日は残念ながら生配信中に音声トラブルが発生して一部プログラムを残して終了しており
12月6日現在視聴できる動画では授賞講演映像の音声が聞き取れなかったり
審査委員によるパネルディスカッションが行われていなかったりしています。

授賞講演映像やパネルディスカッション(別途録画)については正常に見られる状態で後日改めて配信されるそうなので,それまでのつなぎとしまして,当日許可されていましたスクショ画像を軸に,各受賞園館の取り組みを紹介したいと思います。
201205エンリッチメント大賞-01_Screenshot_20201205 (7).png

授賞各賞の概要紹介と審査委員講評の後,
恒例記念撮影タイム。
201205エンリッチメント大賞-02_Screenshot_20201205 (14).png
オンラインなのにコンデジ,その後一眼レフでw
軽妙な撮影トークに思わず笑いがこぼれます。

■大賞■ 札幌市立円山動物園
「21世紀のゾウ飼育の最低条件を寒冷地で実現させる試み」
201205エンリッチメント大賞-03_Screenshot_20201205 (16).png
昨今,日本のゾウ飼育には悩ましいものがあり,適切に飼育されているのか厳しい目で注目を集めているところがあります。
「群れで生活するゾウを長年単独飼育している」「足に負担のかかるゾウを熱く冷たく固いコンクリートの飼育場で飼育している」…
そんな中,旧来の施設で単独飼育されていたゾウが死亡した後,そもそも改めてゾウを飼育すべきなのかというところから議論・合意形成を重ね,寒冷地でも国際基準を満たす飼育を実現できるよう屋内飼育場を整備し,飼育技術の向上に努めているところが評価されました。

ポイントの1番目は
201205エンリッチメント大賞-04_Screenshot_20201205 (20).png
どろ浴びができる,リラックスして寝られる,深くえさを埋めて与えることで本来の能力を生かした採食時間を過ごせるなど
十分な厚さの土を敷き詰めた飼育場のメリットははかり知れません

201205エンリッチメント大賞-05_Screenshot_20201205 (28).png
重機を使って定期的に整地し,地形・景観に変化をつけることも行っています

2番目のポイントは
201205エンリッチメント大賞-06_Screenshot_20201205 (30).png
プールの深さは3m。遊びや体温調節などゾウの生活に重要な要素の1つです

3番目のポイントはエサ
201205エンリッチメント大賞-07_Screenshot_20201205 (33).png
動物の飼育全般に言えることとして,野生では毎日の時間の大半を採食・えさ探しに使っていることが多く,えさを与えられ苦労なく食べられる環境は退屈な時間を増やし生活の質の低下につながります。
そこでえさを探して取り出さないといけない与え方や,飼育側の都合で制約されないタイマーによる給餌を導入

4番目のポイントは遊び
201205エンリッチメント大賞-08_Screenshot_20201205 (36).png
企業より提供を受けた道具・廃材などを利用。
設置場所や方法,組み合わせなどを日々更新して変化をつけています

5番目のポイントはトレーニング
201205エンリッチメント大賞-09_Screenshot_20201205 (39).png
健康管理のために欠かせないのが,動物がスタッフによる検査を受けられるように馴れさせるトレーニング。
スタッフとゾウが同一空間で接触しない準間接飼育を採用

201205エンリッチメント大賞-10_Screenshot_20201205 (40).png
削蹄などの足のケア,しっぽのケア,口腔内のチェック,採血などを専用の壁を通して行っています

201205エンリッチメント大賞-11_Screenshot_20201205 (41).png
寒冷地でミャンマー出身のゾウたちを健康に飼育するための屋内飼育場

201205エンリッチメント大賞-12_Screenshot_20201205 (42).png
見せ物として1頭いればいいという旧来の考えではなく,群れで生活するゾウ本来の暮らしを

201205エンリッチメント大賞-13_Screenshot_20201205 (43).png
ゾウが過ごしたい場所を自由に選択できる環境。

201205エンリッチメント大賞-14_Screenshot_20201205 (45).png
新施設で4頭のゾウをお迎えしてから2年。
日本のゾウ飼育が目指すべき飼育環境,技術向上のモデルとして
ますますの研究研鑽・人材育成の期待も込めての大賞受賞となりました。

たしか先月の上野動物園で誕生したアジアゾウの赤ちゃんが,国内のゾウ?殖のわずか14例目で
上野動物園でさえも1888年のゾウ飼育開始以来初めてというくらい
日本のゾウ飼育は長生きするから飼えているけれど?殖できるほど自然で健全な飼育はほとんどの所ができていないのが実情(?殖実績は市原ぞうの国が突出)。
繁殖への取り組みも開始している円山動物園にさらなる期待が高まります。

個人的には,東山動植物園のアジアゾウ舎なんかも,
運動場みたいで「土」って感じではないものの
家族でのんびり暮らしていて2014年に赤ちゃん「さくら」が誕生するなど
うまくやっている印象なのですが,どういった点が違うのか,
動物の幸せ・生活の質はどこにあるのかを意識しながら両園を見比べてみたいと思いました。
それがわかる展示・情報発信というのもこれからの動物園の役割の1つかもしれませんね。


■敢闘賞■横浜市立金沢動物園
「インドゾウに対するQOL向上の取り組み」
201205エンリッチメント大賞-15_Screenshot_20201205 (54).png

大賞に続く敢闘賞もゾウ飼育の取り組み。
こちらは旧来型の飼育施設で問題行動を減少させインドゾウ本来の自然な行動を引き出した担当者のチームワークとアイディア,それらの結果を大学との共同研究によって科学的に検証していることが高く評価されました

201205エンリッチメント大賞-16_Screenshot_20201205 (56).png
金沢動物園のゾウはヨーコ(42歳)とボン(44歳)。
特に病気なく健康に暮らしてきましたが,常同行動が見られ,
生活の質を改善するための取り組みが行われました

201205エンリッチメント大賞-17_Screenshot_20201205 (58).png
飼育施設はメインパドック(放飼場・プール)とサブパドック,寝室(3室),バックヤード(サービスヤード)からなる旧来型の施設。

201205エンリッチメント大賞-18_Screenshot_20201205 (60).png
えさは枝葉や竹を与えることで枝を折ったりちぎったりする時間が増え退屈な時間が削減。
自動給餌装置を導入して明け方に常同行動が多かった生活サイクルの改善も試みられました
自動給餌器はタイマー式で,1日4回使用。食べている様子が来園者からよく見えない難点あり
このほかペレットを入れた筒形給餌器も使用。これは手動で不定期の使用

201205エンリッチメント大賞-19_Screenshot_20201205 (61).png
センサー式給水システムは,寝室でゾウが鼻を伸ばしたときに水が飲める装置。
お湯も出るようになっている(冬場にふるえが出るときにお湯を飲むとふるえが止まる)

201205エンリッチメント大賞-20_Screenshot_20201205 (62).png
金沢動物園も床材の改善として放飼場に砂を20〜50cm敷きつめました。
足への負担軽減,砂浴びなどの行動を引き出す効果
以前は毎日のように削蹄を行っていましたが月数回になるまで改善されました

201205エンリッチメント大賞-21_Screenshot_20201205 (63).png
寝室の床材にはおが粉を導入。
足の負担が軽減され,熱を発生するため冬の快適性が向上。
放飼場の砂も寝室のおが粉も管理の手間が以前よりかかるようなことはなし

201205エンリッチメント大賞-22_Screenshot_20201205 (64).png
健康管理のためのターゲットトレーニングは準間接飼育
メスの歩行・騎乗・横臥などは直接飼育にて。

201205エンリッチメント大賞-23_Screenshot_20201205 (65).png
夜間開放。金沢動物園もゾウに施設内移動の自由を与え
24時間ビデオ撮影で睡眠時間などを調査・記録。
当たり前のような気もしますが,どこの園でも閉園時には動物をバックヤードに引き揚げさせますよね。
なんとなく夜は屋内で寝るのが動物も快適なのかなと思ったり疑問に思ったりしていましたが
ゾウは夜間行動もしますし居場所を制限されるより好きに動けるほうがいいですよね

効果検証
201205エンリッチメント大賞-24_Screenshot_20201205 (67).png

201205エンリッチメント大賞-25_Screenshot_20201205 (68).png
この取り組みのキモは,なんといってもゾウチームの働く状況を良好に保ち
アイデアとチームワークでゾウの生活の質を科学的裏付けとともに改善していること。
効果があっても日常業務に影響があるなら採用しない原則が徹底していることが印象的でした

201205エンリッチメント大賞-26_Screenshot_20201205 (70).png
ボンのこの長い牙,とても印象的ですよね。まだ行って見たことがないので
ぜひ行きたい動物園の1つです。

5賞のうち2つを書いたところでかなり時間を食ってしまっているので
全部を仕上げるのはもっと先に…
ひとまずここで一旦upします。
ではでは


「エンリッチメント大賞2020」
 → http://zoo-net.org/enrichment/award/2020/index.html
審査委員
 岩田 惠理 氏 (岡山理科大学獣医学部 教授)
 川端 裕人 氏 (作家)
 幸島 司郎 氏 (京都大学野生動物研究センター 教授)
 佐藤 衆介 氏 (東北大学 名誉教授/八ヶ岳中央農業実践大学校 畜産部長)
 本田 公夫 氏 (元 Wildlife Conservation Society
        展示グラフィックアーツ部門 スタジオマネージャー)

市民ZOOネットワークFacebookページ
 → https://www.facebook.com/networkforzooenrichment

一次審査を通過した取り組みに関するオンラインポスター発表
 → http://zoo-net.org/enrichment/award/2020/poster/20201205_poster.html

過去のエントリ
熱かった!エンリッチメント大賞2019(4)葛西臨海エトピリカ&長野飯田市ニホンカモシカの環境改善(2019年12月31日)

熱かった!エンリッチメント大賞2019(3)駆除動物をご馳走に―大牟田市動物園の屠体給餌!(2019年12月31日)

熱かった!エンリッチメント大賞2019(2)柴田典弘さんとトナカイ (2019年12月29日)

熱かった!エンリッチメント大賞2019(1) (2019年12月22日)











posted by ドージマ・ダイスケ at 13:25| 東京 ☀| Comment(0) | このブログについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

記事検索
 

ケイン 基礎生物学
東京化学同人