2019年12月22日

熱かった!エンリッチメント大賞2019(1)

ツイッターではざっとお伝えしましたが,
さる12月7日に行われました
『エンリッチメント大賞』2019年表彰式・受賞者講演会について,
より詳しい情報も加えて このブログにもupしたいと思います。

まずは,当日の授賞式全体の流れについて。

191221エンリッチメント大賞2019_001_1207 (10)東大弥生.JPG

会場は東京大学の弥生講堂。
赤門でおなじみ本郷キャンパスの隣,弥生キャンパスにあります。
五月祭でここ数年毎年「東大水族館」を見に行っている私にはおなじみのキャンパスであります。

191221エンリッチメント大賞2019_002_1207 (11)東大弥生.JPG

13時半から17時までという長丁場のイベント(学会なら1日2日とか普通ですが)
ですが入ると開場時刻の13時を少し過ぎた時点でもう来場者で賑やかな雰囲気。

191221エンリッチメント大賞2019_003_1207s (2)開始前エントランス.JPG

主催の市民zooネットワークや
日本オランウータンリサーチセンターなどの物販,
191221エンリッチメント大賞2019_005_1207s s (1)物販.JPG
動物園グッズのサイレントオークション(各グッズについて
 入札用の紙が用意され,落札希望者は自分より先に
 書かれた金額を上回る額を書き足していく)
一次審査通過した取り組みのポスター発表
過去の受賞園館関連の写真など
始まる前からあちこちに人だかりで盛り上がっています。

191221エンリッチメント大賞2019_006_1207s (6)客席.JPG
会場に入る前にうっかり時間がすぎるのを忘れそうになり
あわてて座席キープへ。最終的に立ち見が出る大入り満員状態になりました。


さていよいよ授賞式・講演会本番。

191221エンリッチメント大賞2019_007_1207s (8)オープニングスライド_0000.JPG

191221エンリッチメント大賞2019_008_1207(27)概要スライド_0000.JPG

動物園・水族館で飼育されている動物たちの環境を豊かにして
生き生きとすごせるようにするのが(環境)エンリッチメント。
自然に近い土や植物を飼育スペースに整えたり,
動物がえさを食べるために手間のかかるよう
わざと複雑で面倒な与え方をして単調な生活にバリエーションを与えたりする取り組みですね。

191221エンリッチメント大賞2019_010_1207 (17)川端裕人さん.JPG
審査委員の一人であり今回で18回目を迎えるエンリッチメント大賞を一から知る
川端裕人さんからの挨拶。


動物園から未来を変える―ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン
川端裕人,本田公夫/亜紀書房

風に乗って、跳べ 太陽ときみの声 (朝日中高生新聞の人気連載)
川端裕人 (著), ゆの (イラスト)/朝日学生新聞社
2019/12/20新刊!


そして授賞式。受賞した取り組みは次の4件でした。

■大賞(総合評価賞)■
 「トナカイの放牧飼育を含むエンリッチメント」
191221エンリッチメント大賞2019_011_1207 (31)概要スライド_大森山動物園0000 - コピー.JPG

受賞:秋田市大森山動物園 柴田典弘さん
191221エンリッチメント大賞2019_012_1207 (46)表彰_大森山動物園_柴田典弘さん.JPG

■大賞(インパクト賞)■
「Wild me?t Zoo〜駆除された動物を動物園のご馳走に」
191221エンリッチメント大賞2019_013_1207 (32)概要スライド_大牟田市動物園0000.JPG

福岡県 大牟田市動物園 伴和幸さん
191221エンリッチメント大賞2019_014_1207 (50)表彰_大牟田市動物園_伴和幸さん.JPG


■大賞(技術賞)■
「海鳥の遊泳を促す採食エンリッチメント」
191221エンリッチメント大賞2019_015_1207(33)概要スライド_葛西臨海水族園.JPG

葛西臨海水族園 野島大貴さん
(左は共同で取り組まれた東大大気海洋研究所の佐藤信彦さん)
191221エンリッチメント大賞2019_016_ (53)表彰_葛西臨海水族園_野島大貴さん - コピー.JPG

■奨励賞■
「ニホンカモシカのマーキング行動を引き起こすためのにおいを用いた環境エンリッチメント」
191221エンリッチメント大賞2019_017_1207 (34)概要スライド_飯田市立動物園.JPG

長野県 飯田市立動物園 前裕治さん
191221エンリッチメント大賞2019_018_1207 (59)表彰_飯田市立動物園_前裕治さん - コピー.JPG

みなさん,おめでとうございます!
191221エンリッチメント大賞2019_20_1207 (65)○記念撮影600.JPG


■続いてはエンリッチメント大賞独立開催10年を記念して
動物ものまねの江戸家小猫さんのステージ。
191221エンリッチメント大賞2019_022_1207 (76)江戸家小猫さん(2代目).JPG

私の世代になると,先代の江戸家猫八(3代目)さん・
江戸家小猫(4代目猫八)さん親子がテレビでおなじみでしたが,
2代目江戸家小猫さんも,お祖父さん・お父さんを凌駕するレパートリー!
「今年動物園に5回以上行った人」と聞かれて半分以上が手を挙げる
玄人だらけの会場を唸らせるものまねの数々。

おめでたい場ということで「初春のウグイス」に始まり
定番のニワトリ,イヌ,カエル3種のものまねを
やりかたレクチャーの形で 軽妙なトークで笑わせながら展開。

そこから,アルパカやテナガザル(シロテとフクロ),
さらにはマサイマラに行って確かめてきたというヌーの声まで
世間一般の大部分の人には細かすぎて伝わらない,
わかる人にはめちゃめちゃ楽しいマニアックな動物のものまねも披露してくれました。



■そして引き続き江戸家小猫さんをMCに
審査委員をお迎えしてのトークセッション。
191221エンリッチメント大賞2019_25_1207 (80)sinsaintalk.JPG

今回で第18回,独立開催から10年を振り返って印象に残る受賞の取り組み
というテーマで1位を語っていただきました。

191221エンリッチメント大賞2019_26_1207 (83).JPG
岩田恵里先生(岡山理科大学獣医学部教授)は「ペンギンヒルズ」(埼玉県こども動物自然公園)。

191221エンリッチメント大賞2019_27_1207 (99)佐藤衆介先生.JPG
佐藤衆介先生(東北大学名誉教授。八ヶ岳中央農業実践大学校畜産部長)は
審査委員に加わったのが最近のことなのでとのことわりつきで
昨年受賞の「チュウサギのための水流給餌」(飯田市立動物園)
「自然のような魚捕獲体験を死んだ魚で実現させるのが上手い」

191221エンリッチメント大賞2019_28_1207 (98)幸島司郎先生.JPG
幸島司郎先生(京都大学野生動物研究センター教授)は
「海で泳ぐペンギン」(長崎ペンギン水族館)
「自分がペンギンだったらと想像するとやっぱり海で泳いで魚獲ったりできるのいいよなあって」

191221エンリッチメント大賞2019_29_1207  (94)川端裕人さん.JPG
川端裕人さん(作家,サイエンスライター)
長らく日本の動物園のエンリッチメントを見つめてきて思うところも多い中
「2016年のかみね動物園と大牟田市動物園」をピックアップ。
 (かみね…園長の全面バックアップ,園全体で70もの取り組み,市民参加のサポート体制)
 (大牟田市…積極的な情報公開・発信,園全体で科学的に継続して取り組む体制を整備)
 「飼育員の吹きこぼれた情熱から始まっていた動物園のエンリッチメントが
  上のステージに上がったことを感じた」

191221エンリッチメント大賞2019_30_0616 (34)本田公夫さん.JPG
※アメリカで活躍されている本田公夫さん(元Wildlife Conservation Society 展示グラフィックアーツ部門スタジオマネージャー)はこの日は欠席。
撮影6月16日

191221エンリッチメント大賞2019_30_1207 (100)綿貫宏史朗さん.JPG
スケジュールの都合で岩田先生が途中退出され,
代わりに進行スタッフとして会を回していた市民zooネットワーク理事の
綿貫宏史朗さんが壇上へ。
「10年前のオランウータンに関する取り組み」
 (東京動物園協会,市川市動植物園,東山動物園,よこはま動物園)
 「日本の動物園関係者がボルネオの生息地に赴いて保全活動に協力するまでに至った」

さらに第1回からの18年分に対象を広げてもう1件ずつ選んでもらうと
川端さん…「長崎鼻パーキングガーデン」(2002年)
       第1回の,ほんとうにスタッフ個人が一生懸命取り組んだ活動
幸島先生…「アクアマリンふくしまのユーラシアカワウソ」
       これも動物の気持ちになったら,いいなあと思って
佐藤先生…「ときわ動物園」(2017年 サルたちの採食エンリッチメント)
       展示の改善。美しさの追求についても考えた    
綿貫さん…「ペンギン村」(しものせき海響館) と
       「シカとカモシカの森」(埼玉県こども動物自然公園) お金をかけずによい環境を実現させた

トークの中では

「結局は金かよ問題」(独創性のある新施設などをそのまま評価していくと
 予算に恵まれない園館のスタッフの創意工夫では手の届かない賞になってしまう)

「動物がエンリッチメントで生き生きとするのはいいのだけれど
 活発に活動する様子を楽しむ,エンターテインメント的に追及するのは
 よいことなのかと複雑な気持ちになる」

「1989年に教え子が全国の動物園を調べたとき,120頭いたキリンのうち常道行動を
 していなかった個体は1頭しかいなかった。たてがみがなくなってたり酷いものだった。
 その頃から比べると格段にレベルが上がっている。変えるのは来場者の目」

「わからんちんの上司や園長を説得するのに大きなエネルギーを消耗したりする。
 そんなとき来場者の目や声を利用したりする」

など動物の環境への熱い希望と現状への厳しい意識から発せられる言葉からは
今世紀の間に日本の動物園の意識や環境は大きく前進した,
けれど道半ばであると強く認識させられました。


■そしてここで一旦休憩タイム。
物販のつづきや,サイレントオークションの〆切,
ポスター発表の動物園のスタッフによる解説など30分が足りないほどの盛り上がりでした。

一次審査通過エンリッチメント

○西海国立公園九十九島動植物公園森きらら
「園全体でのエンリッチメントの取り組みについて」
191221エンリッチメント大賞2019_33_1207s (19)ポスター_森きらら園全体エンリッチメント.JPG

〇公益財団法人 日本モンキーセンター
「Wao屋根完成による様々な効果」
191221エンリッチメント大賞2019_34_1207s (20)ポスター.JPG

〇札幌市円山動物園
「ボルネオオランウータン口腔内チェックのための「真剣ゼミおとなちゃれんじ」」
191221エンリッチメント大賞2019_36_1207s (4)ポスター_円山動物園_オランウータン口腔ケア_0000.JPG

〇神戸市立須磨海浜水族園
「隔離したゴマフアザラシへのエンリッチメント」
191221エンリッチメント大賞2019_35_1207s (17)ポスター_須磨海浜水族園_ゴマフアザラシおもちゃ.JPG

〇埼玉県こども動物自然公園
「たくましいイエウサギがくらす「ぴょんぴょん村」」
191221エンリッチメント大賞2019_37_1207s (5)ポスター_埼玉こども動物自然公園_イエウサギ_.JPG

エンリッチメント大賞 2019 一次審査を通過した取り組みについて
http://zoo-net.org/enrichment/award/2019/first.html


■休憩時間の後は,受賞者の皆さんによる発表・講演会。

191221エンリッチメント大賞2019_40_1207s (21)発表.JPG

開会早々に「受賞者の皆さん,熱い方ばかりで,面白い話が聴けると思います」と
ハードル上げまくりの紹介があったのですが
その言葉に違わぬ熱い取り組みばかりで各30分の持ち時間に
たっぷりと密度の濃い発表ばかりでした。

その内容は次回しっかり書きたいと思います。ノ


■授賞式・発表講演会がすべて終わった後は懇親会。

191221エンリッチメント大賞2019_50_1207(270)懇親会.JPG

受賞者・審査員・スタッフの皆さんをはじめかなり参加率高かったのではないでしょうか(^_^)。

審査員の皆さんにはご挨拶させてもらいまして,
江戸家小猫さんともお話させてもらいました。
全国の動物園を回ってふだんあまり鳴かない動物の声も
飼育員さんに取材するなどして調べているそうです。

191221エンリッチメント大賞2019_50_1207s (30)懇親会_料理.JPG
懇親会の料理も,おしゃれで食器不要・ゴミも少ない素敵な一品たち♪
ケータリングの業者さんの計らいで,受賞対象の動物たちの写真をあしらった小旗が
立っている粋なアレンジも(⌒∇⌒)♪
※かわいらしい鳥の写真,受賞したエトピリカじゃなくてパフィン(ツノメドリ)では…?
 と思ったのは内緒(;^ω^)


191221エンリッチメント大賞2019_55_1207s (45)柴田典弘さんと.JPG
懇親会でも人だかりと熱い語りが絶えなかったのが
大森山動物園の柴田典弘さん()。
キリンのハズバンダリートレーニング等で2013年にも同賞受賞。
今回私がここに参加したのもTwitterで柴田さんが来場を強く
呼びかけたからなんですよね。


飼育スタッフ志望の学生さんたちが真剣な目で柴田さんの話に
聞き入っていましたが,面白いけど笑っていいのかと思うような
ハードなやばい話がポンポン飛び出してすごかった…
次回,その一部もちょっとだけ紹介する予定



市民zooネットワーク理事の綿貫さん(@wantanuki)ともお話させてもらいました。
この日の催しも20人以上の学生スタッフが参加していましたが
市民zooネットワークでの活動は動物園や水族館への就活でけっこう生きて
就職できたメンバーは多いそう。飼育スタッフに就くとこちらの活動を続ける余裕が
なくなってしまう人がほとんどだけど,現場の厳しさを知った状態で就職するので
あこがれの仕事と現実とのギャップに心折れてしまうような人は
まずいないとのこと。飼育スタッフに就職就業したい若者はぜひ
市民zooネットワークに参加してみてはいかがでしょうか。


●市民zooネットワークHP
 http://zoo-net.org/

エンリッチメント大賞2019
 http://zoo-net.org/enrichment/award/2019/index.html

サポーター募集(年1口3000円)
 http://zoo-net.org/about/supporter.html


 📖霊長類図鑑―サルを知ることはヒトを知ること
公益財団法人 日本モンキーセンター編/京都通信社
※市民zooネットワーク理事で獣医師の綿貫宏史朗さんが前職の日本モンキーセンター学術部時代に携わった本(現職は環境省)181種の写真&解説,解剖学・生態学の観点から掘り下げたコラムも充実。全447種の和名リストを眺めるだけでもなるほどと興味深い。


 
    












posted by ドージマ・ダイスケ at 10:11| 東京 ☀| Comment(0) | このブログについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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