2019年08月16日

【本と考える】絵本『生きているのはなぜだろう。』(後)

前エントリで紹介しました
『海馬』などのベストセラーを世に送り出してきた脳科学者の池谷裕二先生が
生きているとはどういうことか,科学的回答を提示した絵本
『生きているのはなぜだろう』

  生きているのはなぜだろう。 (ほぼにちの絵本)
※ほぼ日の特設ページにリンクしています
池谷裕二,田島 光二/ほぼ日
楽天ブックス honto
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この本を知って発売早々に購入したのは
私の描いた『マンガ生物学に強くなる』でも
「生物とは何か」「生きているとはどういうことか」について
最終章で取り上げているんですよね。



もともと高校生物で扱う分野のうち,
細胞・組織から生殖・発生・遺伝・バイオテクノロジーの
範囲を紹介するということで描いたマンガなんですけど
高校の生物(科目名「生物基礎」)でも,
最初に生物の特徴について扱う
んですね。

教科書によって書き方は異なるのですが,だいたい
・細胞でできている
・エネルギーを消費する(ATPを介する)
・体内環境を保つはたらきをもつ
・遺伝情報(DNA)をもち,子孫をつくる

の4項目からなります。

ただ,これって,この教科書で扱う学習項目(細胞の構造・代謝・恒常性など)についてイントロで説明するための項目立てみたいなところがあって,今現在地球上に存在する生物の共通点ではあっても,これが生物と非生物を分ける特徴というわけではない

木星や土星の衛星に生命を探す地球外生命体の探索プロジェクトでは水のかわりにメタンの海が存在する世界で,そんなところで生命体が息づいているのなら前提としてDNAやATPを使っているなんて考えにくい。

私の場合は,
ロボットは生物ではないとするなら,それはなぜ?
エネルギーを吸収して成長し移動するなら台風も該当する
などの事柄をとりあげて,生物が生物である条件を特定していくよう
話を進めました。
bb_p269_台風1908_550px.png

福岡伸一先生の『動的平衡』ですとか
ニュートン別冊『生命の科学』などの説明を自分なりの解釈でかみ砕いて
生物とは「内と外の境界をもち,自らの一部を壊し再合成しつづけたり
自己複製(生殖)することで自分を維持し続けるもの」
と考えています。

bb_p270_エントロピー1908_550px.png


bb_p271_細胞ー破壊と再生1908_550px.png


私のマンガでは,
エネルギーを外から取り込んで物質を入れ替えながら
存在を維持し続ける
生物ではないものとして台風を取り上げましたが,

池谷先生の『生きているのはなぜだろう。』では
台風よりもっと身近でシンプルな現象を登場させ,
それを生物と分けるのではなく,逆につなげることで
1つ1つの生命が全宇宙に果たす役割を見つけるという
大胆な展開で答えへと導いています。

このあたりが,自分の発想の限界を思い知らされ,刺激になりました。
池谷先生がストーリーの下敷きにした「散逸構造」の理論からすると
奇抜でも大胆でもないのかもしれませんが…


自分の場合,ある程度理科や生物について知っている人にとってはごく普通(?)の,

・個体は無数の細胞が分裂して増えたり死んだりすることで維持され生きている。
・その個体が多数生まれ育って子孫を遺すことで,個体群や種が維持されている。
・そしてこの地球上で無数の種類の生物がかかわりあうことで今の生態系のバランスが保たれている

bb_p274_個と生命の流れ1908_550px.png

といった知識から,

私たち1人1人は無数の生命の生き死にによって
生まれてから死ぬまで存在できているのと同時に
私たち1人1人の生命活動そのものがほかの無数の生命とかかわりあっている。
たとえば経済的に目覚ましい活躍ができなかったり,生涯において
子孫を遺せなかったとしても,その生まれてから死ぬまでの生命の営みは
その間ともに生きてきたすべての生き物の一員として役割を果たしているのだ

bb_p275_命と世界1908_550px.png

という結論で締めさせてもらったわけですけど
子どもから大人から,どんな人でも読めばわかるものにしようとすると
そういう途中の理屈をすっ飛ばして一気に伝えるワザというか
切り口を見出すのが大事になってくるんですね。

堂嶋版の「生きている」とはどういうことなのか
数ページをこのエントリ中に貼りましたので,
『生きているのはなぜだろう。』ともども
命について考える参考,きっかけとなれば幸いです。



マンガ生物学に強くなる (ブルーバックス)
 作:堂嶋大輔,監修:渡邊 雄一郎/講談社
 
楽天ブックス honto 紀伊國屋書店 
セブンネット Amazon



ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)
『生きているのはなぜだろう。』特設ページ
 https://www.1101.com/books/ikegaya_tajima/
『生きているのはなぜだろう。』ができるまで
 https://www.1101.com/ikegaya_tajima_making/

当ブログ「本を出すぞプロジェクト」(出ました)
 http://ddaisuke.seesaa.net/category/10019698-1.html

新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)
 福岡 伸一/小学館
 
紀伊國屋書店 
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posted by ドージマ・ダイスケ at 14:01| 東京 🌁| Comment(0) | このブログについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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