5月のことになりますが,東京は青山にある『ほぼ日』のリアル店舗「TOBICHI」に初めて行ってきました。
『海馬』などのベストセラーを世に送り出してきた脳科学者の池谷裕二先生が
生きているとはどういうことかをテーマにした絵本
『生きているのはなぜだろう。』を出され,
その出版キャンペーンで作画を担当された
田島光二さんの関連映像などが展示されるということで,直営の現地で購入。
制作の初期に主人公の少年のイメージを固めるために
作成されたという立体フィギュア。
映像は,制作時のイメージスケッチなどを描き込んだノート
インタビュー時に即興で描いたペインティング,
空間に絵が描けるソフトで描いた即興イラスト。
全部見ようとすると30分近くかかり,当時店内が空いていたのをいいことに
がっつり見てしまいました(;^ω^)。
ほんとうならその日にでも写真をTwitterに上げて開催中に情報が届くよう紹介すればよかったのですけど
そうこうしているうちにあっという間にイベント期間が終わってしまい
今更Twitterで…というタイミングになってしまいましたので
こちらで改めて本について書いてみたいと思います。
帯に「この本には答えがあります」と力の入ったコピー。
「人が生きることには,こんなにはっきりした理由があった」!
物語のなかで,小学生の「ぼく」は,あやまってカッターナイフで指先を切ってしまい,保健室でこの傷が治って指がもとにもどるのはなぜだろうという疑問をもちます。そこに投げかけられたのは「秩序」というキーワード。
「ぼく」めっちゃ頭いいな!
細胞がどんどん入れ替っていくこと
それでも自分という存在は変わらないこと
どんどん思いをめぐらせて,
この世には秩序を保ち,構成する物質が入れ替わっても
もとのままで存在し続けるものと,
壊れたらそのまま形を失っていく秩序のないものがある
という宇宙全体の約束について投げかけられると
自分の存在,生きていることが宇宙の秩序に関わっていることを
”見つけて”しまいます。
「そう。
だから生きなくては。」
「何のために生きているのか」
「何をなすべきか」
「私は必要とされているのか」
という問いに対する,池谷先生からの1つの答えを示した絵本。正解かどうかは,読む人それぞれが感じて,他の本もいろいろ読んで考えていけばいいかなと思います。
この本は,池谷先生が東大での講義の第1回でいつも「きみたちが生きる意味」について語っていたことから始まった企画ということもあり,(現在は講義スケジュールの途中に組み直されているそうです)「人が生きることにはこんなにはっきりとした理由があった」という帯のコピーは編集担当の菅野さんが気合入れて決めちゃったもので,池谷先生自身は「自然界で物事に意味があるのか考えだすと何もできなくなっちゃうので,たいていのものは『そういうものだ』と思ってやるしかない」と,養老孟司先生との対談でもおっしゃっていますね(^_^)。
養老孟司×池谷裕二 定義=「生きている」
https://www.1101.com/yoro_ikegaya/
対談の最終回で「どうしよう。
‥‥帯、これでもう印刷してしまいました(笑)。」(;^ω^)
悩める人々に対して 宗教だったら,真理はこれだと断言して教え導くことで救いを与えてくれますけど,科学は自然界に起きている現象・存在する事象に説明を試みる行為であって,「意味」について言い切ることはできない。なので,それを「ぼく」の言葉を借りて言いきってしまっているこの本にスピリチュアルな香りを感じてしまうのは多分に仕方のないところだと思います。
(田島光二さんの光にあふれた,筆致の生々しい厚みのあるタッチの絵がまたすごくて,日常と非日常が溶け合わさって自分を包み込んでくるような強さがあります)
ですが,「ぼく」がそう思うに至る材料は,とても科学的な知見,事実であり法則。
巻末で池谷先生が解説されていますが,
生きることに意味があるのかという問題は,
人それぞれ価値観の違う人間社会の中では答えは見つからない
自然の法則の中に,自分が存在する理由が見つかれば
それは自分の価値に下限があることだ
これにはすごく共感するところがあって
この本が発売されると知って
すごく興味を引かれ,購入したのは,
確かめたいことがあったんですね。
それについては,長くなりましたので,次回のエントリで。
![]() | 生きているのはなぜだろう。 (ほぼにちの絵本) ※ほぼ日の特設ページにリンクしています | |||||
池谷裕二,田島 光二/ほぼ日 | ||||||
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![]() | 田島光二アートワークス ZBrush&Photoshopテクニック | |||||||
田島光二 / 玄光社 | ||||||||
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ほぼ日 『生きているのはなぜだろう。』特設サイト
https://www.1101.com/books/ikegaya_tajima/
『生きているのはなぜだろう。』ができるまで
https://www.1101.com/ikegaya_tajima_making/