2007年05月12日

おすすめ本『ひとりぼっちのジョージ』


 
ひとりぼっちのジョージ―最後の
ガラパゴスゾウガメからの伝言
 ヘンリー・ニコルズ, 佐藤 桂
 早川書房 (2007/04)
木原アイコン
この春に出た新刊なのだが,この本は,いい!
生物IIの教科書(第一学習社版)でも取り上げられている,最後の1頭となってしまった雄のガラパゴスゾウガメ「ジョージ」について詳しく紹介している本なのだが,ガラパゴスゾウガメを軸にしてこんなに豊富な話題に話が広がるのかと感動すら覚えてしまうくらい,1章1章,1ページ1ページを読み進めるごとに新しい驚きと発見がある超面白い本なのだ。

各章の内容
1−発見
 1971年,諸島の最北にあるピンタ島でヴォグヴァルジ夫妻が出会った
 1頭のゾウガメは,既にピンタ島では絶滅したとされていた
 ガラパゴスゾウガメ(ピンタゾウガメ)の65年ぶりの発見であった。
 このような絶滅動物の再発見という快挙は他にもいくつか例がある。
2−ロンサム・ジョージのガールフレンド
 CDRS(チャールズ・ダーウィン研究所)でジョージは
 ペアの相手としてイザベラ島の雌と一緒に飼育されることになったが
 別個体群の雌雄の交配には問題はないのか,という問題。
 またもう1つ,ジョージが全然その気にならないという問題も…。
3−種の起源はどこに
 可哀想な実験によって「ゾウガメは意外と泳げるが大洋を渡るのは無理」
 ということはわかっているが,ジョージたちの祖先はどうやって
 南米大陸から渡ってきたのか?
4−進化の海を漂う
 一般的な分類では14ある(うち3つは絶滅)といわれる
 ガラパゴスゾウガメの亜種はどのように分かれていったのだろうか。
 追求する課程で「ジョージって,
 ピンタゾウガメじゃないんじゃね?」疑惑が!
5−人間という罠
 自然保護のフラッグシップ(象徴)となってきた動物たち
 一方で,人間が入り込み,外来種を持ち込むことで
 野生生物や自然の景観にまで深刻な影響を与えてきた例は
 枚挙に暇がない。
6−ナマコ戦争
 アジアで強精剤として珍重されるナマコをめぐる攻防。
 乱獲する地元漁民や密猟者たちは海だけではなく
 ガラパゴス諸島全体の生態系に深刻な影響を与えた。
 地元住民と自然保護の折り合いはどうつけていけばいいのか。
7−ピンタ島の謎
 ジョージの発見以後もピンタ島にゾウガメが生きていた
 証拠が見つかっている。他にまだピンタゾウガメの生き残りは
 いないのか?
8−連れ去られた仲間たち
 世界中の動物園や個人収集家が所有するゾウガメの中に
 ジョージのお嫁さんになれる雌のピンタゾウガメはいないのか?
 それを追うと悲惨なゾウガメ拉致・虐殺の歴史に直面する。
9−島へ帰る日
 ひとつの種を保護し飼育する最終目的は自然に帰すことである。
 いくつかの成功例も幾多の年月と慎重な試行検討を積み重ねて
 成し遂げられたのである。
10−生命への介入
 いよいよ自然状態で子孫を遺すことができないとなると
 人工授精なども考えなければならない。
 しかし爬虫類の場合,色々やっかいな難問があるのだ。
11−クローンとキメラ
 さらにはヒツジで成功したクローン技術の応用が考えられる。
 ただ,仮にジョージで成功しても100%の純粋なピンタゾウガメは
 つくれないし,人工授精の場合と同様に多くの難関が待っているのだ。
 

なんといっても,この本の魅力の1つは,
知識の羅列や解説に終始することなく,
すべての章がガラパゴスや世界の絶滅に瀕した生き物たちをめぐって
冒険や採集,保護に汗を流し目を輝かせた人たちのドキュメントと
なっていて,彼らの姿が生き生きと描かれている
ことだな。

ゾウガメの背に馬乗りになったり
ウミイグアナを何度もつかまえては海に放り投げたり
タカを銃の先で叩き落とすなどの無邪気な「実験」をしていた
後の大科学者,チャールズ=ダーウィンや
ジョージの遺伝子を後世に残すために,そのフィンガーテクニックの
技術を期待されたドイツ人女性獣医師・フォン=ヘーゲル,
地元住民たちの権利を守るとして国立公園の規正を
大幅に緩和する法案を通過させたり,果ては自然保護施設を
襲撃・略奪せよと暴動の扇動までした国会議員・エドゥアルド=ベリス,
さらにはサンディエゴ動物園から帰還した精力旺盛な
エスパニョーラゾウガメ,21号こと「マッチョ」など
数え切れないほどのキャラクターが織りなす人間と生き物のドラマに
あるときはクスッと笑い,あるときはハラハラドキドキ,
またあるときは残酷な現実にショックを受けることだろう。

まさに喜怒哀楽のすべてが詰まった,
理想と現実,希望と絶望がせめぎ合う
現在進行中の命の物語なのだ。

この本をお薦めしたい読者層なのだが,
1ページ43字×19行と普通に字が小さくて多いし
300ページ近いボリューム
(ただし最後の40ページは索引と原注と参考文献のリスト)で
高校1年くらいだとちょっときついかもしれない。

本の内容をきっちり理解するには高校で学習する生物の
予備知識がほしいところだが,
終盤の人工受精やバイオテクノロジーの部分(紹介されている
事項は文章の中できちんと説明されてはいる)を除けば
ガラパゴス諸島やその生物たちの発見と自然破壊の歴史や
自然保護の活動とさまざまな障害や問題点といった話だし,
おもな世界の地名,動物や鳥などの名前と姿が
頭に入っていれば十分楽しめるだろう。

今ミドルティーンでちょっと難しいかなという
お子さんがいるご家庭なら,親御さんが読んでも楽しめる本だし
とりあえず買っておいて2〜3年後に読めばいいくらいの,
保存版にして損はない本だと強くお薦めしたい。

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posted by ドージマ・ダイスケ at 08:13| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【おすすめ本】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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