今,間違いなく日本で一番有名な予備校講師といえば,「いつやるの?今でしょ!」のフレーズで一世を風靡した東進ハイスクールの国語科専任講師(現代文)・林修先生ですよね。
受講生の心をつかむ,わかりやすくて面白い切り口の話術や,学生時代太っていてもてなかったり東大卒業後就職した銀行を半年で辞めたことに始まる浮き沈みの激しい人生を送ってきたことなどをぶっちゃける気さくで明るい性格で冠番組を含むテレビのレギュラー番組を現在6本も持っているという時代の寵児といってもいい超売れっ子先生ですが,その林先生がテレビでこんなことを言っていました。
「講義の後に生徒が質問に来るような授業はダメだ」
私はこれを聞いて「あれっ?」と思いました。
何百人何千人と難関校合格者を出している大手予備校の人気講師で,毎回のように講義の後に生徒が質問に殺到する先生を知っているのでそういう講師の形を否定しているのと,私も,自分の描いている生物(学)マンガを読んで,疑問や興味を感じてそこから色々調べたりしてくれると嬉しいと思っているので,ちょっと違うなと。
疑問と興味は一体のものだし,新たな知識を得ることでそこから新しい疑問が浮かぶのは当然ではないかと。質問が浮かばないというのはむしろよくわからなかったときとかじゃないかなと。
国語は他の教科と違うのかなあ,池上彰さんもテレビ番組でよく「いい質問ですねえ」と言ってるように,社会でもやっぱり疑問あってこその解説だと思うしなあ…
…はい,とっくにお気づきの人もいると思いますが,林先生が教えている東進ハイスクールの場合,これが当然なんですね。こうでなきゃダメなんです。
なぜなら,林先生は,生徒の前で講義をやっていないから。
東進ハイスクールは100%映像授業で,校舎はあるけど生徒は机について1人1人パソコンの画面で自分の受講するビデオ授業を見る。
つまり,この場合,授業後に生徒が先生に質問する必要が生じるというのは,授業でわからないところがあったので教えて欲しいってことですよね。発展的な疑問や興味として思いついた”質問”は講義に付随するものではなくて会話・雑談・セッションに近い性格のものですからその場ですぐ先生と話せる状況になければしようと思わない。本気で知りたいなら各自調べましょうということになる。
これだったら,当たり前というか,むしろ私の考えていることと全く一緒ですよね。
前にも書きましたが,7月に発売されました私の『マンガ 生物学に強くなる』は,小さいことだけれど知らない人が読んだら疑問に思うであろう,しかし意外と本などでは説明されていない事柄を1年生のすずや森野に質問させて,それに答える形でできるだけ解説するようにしました。
高校の教科書って当たり前のごとく何の説明もされないけれど「ちょっと,そこは知らない人が読んだらわからないんじゃない?疑問に思うんじゃない?混乱するんじゃない?」と思うようなところが結構あるもんです。教科書は学校で先生が授業で説明することを前提につくられているのである程度仕方ないとしても(英語の教科書なんて本文の日本語訳がついてないからこれだけで自学自習なんて無理ですしね),参考書も教科書で書かれていることを読みやすくまとめてくれていても,知っている人にとっては当たり前なことというのはなかなか拾えてくれてなかったりするので。
つまり,そういう意味では,私も「読み終わって「?」が浮かばない」マンガを目指して描いている点で考え方・事情は全く同じなわけです。説明の展開にしても,図の表現にしてもですね。
もちろん,しゃべり言葉のためセリフの日本語がおかしいところなどのように「すみませんそこは普通のマンガと同じで本の中で説明するってのもなんなんで察してください,スルーしてください」という箇所も山ほどありますけどね。(;^_^)
で,このことをつぶやきたいと思ったのも,
私,これに気がついたのがつい最近のことなんですよ。
代々木ゼミナールが経営を大幅縮小して28ある校舎の20を閉鎖する大リストラを行うというニュースをテレビで解説している際に,「代ゼミに代わって業績を伸びている東進ハイスクールは旧御三家(河合塾,駿台,代ゼミ)とは違って教室授業を全く行っていない」と言っているのを聞いて「あー!」と,やっと気がついたんですよ。
塾講師なのにタレント活動をばんばん展開しているのも,その年に開講する授業や集中講義など,必要なコマ数を一度収録したら同じ授業は二度やる必要がないから,1年のかなりの日数を拘束されずに自由に使えるわけですよね。複数の校舎を移動するロスもないし。へたすりゃ同じ映像を次の年も使い回してまる1年間全く講義をせずにすませることも不可能ではない(国語は平成27年の大学入試から新課程での受験になりますけど,旧課程と比べて特に何が変わるというわけでもないですしねぇ)。
で,何をいまさらを思われる人も多いかもしれませんよね。
東進が映像授業専門の予備校だというのは,高校の教育に関わっている人にとっては常識みたいな話ですし,林先生が去年「今でしょ」で流行語大賞を獲った頃以降だけでも東進ハイスクールjの方式はテレビでもしばしば紹介されてきたはずですけど,私は頭の中でまったく理解できてなかったんですね。予備校の教室で講義をやってるイメージが全く抜けていなかった。
まあ,「講義の後生徒が質問にくる」という話自体,教室授業を前提にしないと成立しない話ですし(昔は東進も教室授業をやっていたので林先生はその頃からの自分の姿勢として語っていたのかもしれません),誤解を生じさせるトラップはいくつもあったなと思うわけです。ですがそのトラップも勝手に自分が作っていたわけで。林先生が有名になったきっかけの「今でしょ」も,後回しにされがちな漢字の勉強を2年生のうちにやっておこうという講義ビデオの中のほんの一言を拾ったものだったわけですが,「後回しにするよね」という生徒の雰囲気を受けてのセリフだと勝手に思い込んでしまったんですよね。そのビデオはCMで使う映像を拾うために授業の様子を1回分撮影したものだと思っていて,全部の授業がビデオ収録されていたと思っていなかった。
思い込みってすごいなと。
今回書きたかったことは以上です。
読む人のことを考えると半分以下の分量で書くべき内容だと思いますし
書く自分のことを考えてももっと短時間で済ませるエントリだったと思いますが
次がんばりますm(_ _)m
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