2011年10月31日

本書でヒット作の描き方は学べません!?「ジャンプSQまんがゼミナール MANZEMI」

秋晴れで日中けっこうあたたかい日差しに包まれることはあっても
朝晩やときには日中もひんやりじんわり冷え込む日が多くなってきた
10月も末の今日この頃,
うちで飼ってるメダカたちもとうに産卵シーズンを終えた感じなのですが
”地味子”と呼んでる野生型体色の子たち(クロメダカ)には
まだ卵を抱えてるのがいるんですよね…野生型はほんとうに繁殖力旺盛ですね。
本音としては,幹之の光沢ってなかなか出ないので白メダカの
グループにもっと子孫をつくってほしいんですけどね(;^_^)

さて,仕事が忙しかったり週末帰省したりで全然更新できてない今月。
今週2度ほどUpしましたが,手短に記事がつくれるニュース紹介だったり。
書きたい内容はほかにあるんですけどね…
と言っていたうちの1つがこの本の紹介。





本ジャンプSQ.マンガゼミナール
MANZEMI (愛蔵版コミックス)

作・喜多野土竜/絵・斉藤むねお
集英社→Amazon

ジャンプSQ(スクエア)誌上で連載されている
漫画の描き方講座の単行本。
B5判の大型本ですが漫画の描き方についての解説本や作画資料本
としては標準的なサイズですね。
連載では見開きの中央寄りに漫画パートを,
両サイドに文章の補足解説を配した形態でしたが
単行本では各章ごとに前半に漫画パート,
後半に解説パートという構成になっています。

で,9月の上旬に発売されたこの本,発売早々に買いました。
私はツイッターで前より作者の喜多野土竜先生を知っていて
(本書の著者profileを読むと共同PNとあり「?!」なんですが)
その驚異的な知識量(歯に衣着せぬ物言いで絡まれることも多々あるんですが(;^_^))
と,1,2度しか見てないんですがジャンプSQ誌上の
連載内容の密度の濃さの記憶から,これは買っておくかな…
なんてったって私は3大出版社のどれかから漫画本を出すんだから
1980円くらいの投資は必要だ というわけで。

生活エリアの書店にはちょっと入荷がなかったので
秋葉原の有隣堂で入手。(その後いつもの書店にも入荷されました)
同書店の同ジャンルランキングでは
「萌えキャラクターの描き方 顔・からだ編 」という本が1位で,
パラパラ中を見てみるとけっこうよかったですね。
作画例が豊富で,なにより本当にかわいい絵が多くて
これをお手本にちょっと描いてみるかという気になる感じの
書名と表紙が恥ずかしくなかったらこっちを買ってたかも(;^_^)

んと,何の話を書いてんだ?
そうそう,マンゼミの話ですよね。

えーとですね,宣伝帯やネット販売のページで
前面に書かれているこの本のキャッチコピーは
「本書でヒット作の描き方は学べません!」
というもの。
いや〜,集英社,まるで売る気がありません。

なんてったって,ジャンプSQの公式ページに
連載作品として載っていないですし,
スクエアコミックス発売リストにも載ってない。
漫画の形はとってますけど,コラムや企画ページと同じ扱いで
連載マンガとして扱われてないんですよね。
単行本の形態・ジャンルも「愛蔵版コミックス」で
ジャンプスクエアの漫画という扱いではない。
ま,それはそれで雑誌の枠と関係なく売り出したほうがいい本と
考えれば納得できますけど,この漫画の描き方本っぽくない
カバーデザイン(カバーを外した表紙は先生役のメインキャラ)
であれば,中身がどんなものか見られるように配慮して
おかしくないのに集英社の紹介ページにも1ページの見本も
イメージカットすらなく,Amazonのなか見検索も対応していない。
有隣堂では立ち読みできましたけど近所の書店では
漫画扱いでパックされてましたから,中身を知ってる人しか
買えないのにね…

てなわけで,私がひとつ紹介しましょうかねと
キーボードを叩く所存なわけであります。

んーとですね,

確かに,
「これ読んだおかげで,描いた漫画がヒットしました!」
という人はあまり出ないかもしれませんね…

というのも,
本書でヒット作の描き方は学べません! マンガは、キャラクター・アイデア・演出など、たくさんの要素を学ぶ必要があるのですが、それを1冊にまとめるのは、とても難しいのです。そこで本書は、ペンとインクでマンガを描く以前の、もっと基本的な人体デッサンの技術を、マンガと解説文とで中学生でもわかるように説明しようと試みた書です。


B5判・192ページながら,絵の描き方に内容を絞った本ですからね。
「神作画!」と話題になるアニメはあっても
絵のデッサンがうまくなったからって
おもしろい漫画がかけたり,漫画の人気が目に見えて上がる
ってのはなかなかなさそうですよね。

そして,
「これ読んだおかげでデビュー作が描けました!」
という人もあまり出ないかもしれませんね…

というのも,
> ペンとインクでマンガを描く以前の、
> もっと基本的な人体デッサンの技術を
> 中学生でもわかるように説明

ということなのですが,
内容はかなり専門的なんですよ。
これをマスターするには
重心を左右ずらした全身像や
下半身のデッサン10パターンや
ひじから先を四角で表現した22パターンや
手のデッサン96パターン×左右=192パターンとかを
地道にコツコツ練習していかないといけないということなんですが

そんなことやってられるかいぃ!

つまりこの本を通して漫画の何が上達するかというと
重心バランスを意識して描くことで生き生きと自然な絵になる
男女の根本的な描き分けのポイントは姿勢や骨格にある
人体は下半身から練習することで本当にバランスのよい絵が描ける
などなど。

つまり,キャラを描いてて,なんか絵に違和感がある,
微妙に下手な感じがするという人にとっては
補正して自然な絵,生き生きとした絵が描けるようになる
アドバイスになり得るかなと思いますが
「ペンとインクでマンガを描く以前の基本」といわれても
これから漫画を描こう,始めようという人が
これを読んで絵を勉強して漫画を…ってなるかというと
逆に面倒くさくなって描くのをやめたくなりますよ。

漫画を描くのに,漫画家になるのに大事なのは
とにかく描くこと。自分が描きたいこと,面白い(またはすごい)と
思うようなことを,まずはネーム(絵コンテ)でも鉛筆書きでも
下手でもいいしどんな短い作品でもいいから
1本最後まで描く工程を重ねていくことだと思うわけですね。
小学時代に父が買ってきてくれた
手塚治虫先生の「マンガの描き方」でも「漫画の人物には骨も関節も
ないのである。座っている男が1馬身は離れたビールのコップを
とろうとして手が届く,それでよいのだ。要は男がコップを
とったということがわかりさえすればよいのである」(p85-86)
と書かれてますし,かのリンカーンも「足は地面から胴体まで
あれば長さはどうでもよい」と語っているわけですし。

手の描き方にせよ全身の描き方にせよ,
初心者にとっては「何でも描ける力をつける」ことよりも
超基本のデッサン知識と
「今描きたいこの絵が描ける方法(ぶっちゃけお手本)」が
ほしいわけですからね。

じゃあこの本は何なんだということなんですが
とにかく理論としては目からウロコで興味深い!
豊富な話題・知識が圧巻で読んで面白いです!


ミケランジェロのダビデ像が静的なポーズの彫刻なのに
活き活きとしたリアリティを感じるのはなぜか
という話題から始まり,
彫刻の話や格闘技・武道や古典芸能,
西洋人と東洋人の文化や骨格の違いなど
関連情報や例えとして多岐にわたる話題を絡め
絵の描き方・しくみの理解のしかたについての
知識が楽しく身につくことはまちがいないですね。

つまり「基本的」という売り言葉とは裏腹に,
ある程度描いている人がさらに一歩ステップアップするために
目からウロコになるポイントがたっぷり盛り込まれているんですね。
ツイッターなどを通じてプロの反響がかなりあると聞きますが
専門学校や美大出身者も多いとはいえ,漫画は1つの産業と
なっている割にはそのノウハウは体系化されておらず
基本的に我流・独学(アシスタント経験者で師匠の
指導を受けているような場合も)ですから
無意識に描いてきたけどそのポイントが言語化・理論化されて
「ああ,そうだったのか!」という感動(所謂アハ体験)が
あったりするんでしょうね。

私もこの「マンゼミ」を購入しまして
男性は腰を落とした立ち方で猫背になり顎が出る姿勢,
女性は膝の立った立ち方で胸を張って腰の反った姿勢
というポイントとそうなるしくみの解説(2章)を読んで
「おお〜なるほど,そういや木原先生も猫背がに股で
 まさにこの姿勢だし,部長と副部長の女子2人も胸を張った姿勢,
 下級生の2人はペンギン立ちとゴリラ立ちで,
 まさに理論通り既にできてるわ」(^皿^)

とか,

「最初に顔のデッサンを学ぶとそこばかり向上して
 生首マンガになる。マンガは5W1Hを読者にわからせるため
 最低でも見開きに1個は全身のカットが必要」
「手を描くには細かいところより全体のバランスを優先
 5本の指を独立して描く前にミトン状のデッサンを描くとよい」
という解説に
「そうそう,俺も下半身を全然描いてないから
 描こうとしてもバランスガタガタで全身が全然描けない
 生首マンガ…って,耳痛いわい!」
 (うちの高校生物マンガは舞台は生物実験室で決まってるから
  誰が喋ってるかわかるだけでも一応話は進むんですけどね)
「そうそう,上半身だけだからこそ手の表情はキャラの描き分け上も
 単調なコマに変化をつける上でもとっても重視してて
 “プロでも自分の手を見て描く人は多い”と描かれているとおり
 私も自分の手を見て描いてます。主人公が左利きなのは鏡を見て
 描きやすいからという理由もあります。(^_^)
 難しいカットではミトン絵で描くときもありまっせ〜」
 (ミトン状の絵はデッサンの話であって作中で使えとは書かれてないですけどね(;^_^))

というふうに,

自己採点して,痛い指摘に悶えたり
勝手に合格点つけたり,と色々楽しませてもらいました。

筆者の喜多野先生は元編集者の漫画原作者ということで
数多くの投稿者(作品)を見てきて
「デビューできる作者のほとんどは投稿3作目以内で掲載を獲得する」
という持論(経験則)を示すなど
普段からプロ(商業誌連載)を目指す投稿者を意識・想定して
“漫画の作り方”を語っておられて,その点で基本と枝葉,
身につけるべきものの優先順位が素人の求めるものと
若干ずれている(求めるものが本当に必要なものとは限らないわけですが)
点はなきにしもあらずですが(それを喜多野先生自身も自覚されてて
特に本書の前半は言い訳が多い(;^_^)),
私のように理屈っぽい人間にとってはとにかくまず読み物として
面白かった。ハウツーとして役に立つポイントもけっこう
ちりばめられていて今後気をつけて描いていきたいと思います。


漫画の描き方本の大勢を占める作画例(お手本)集としては
各章の最後に漫画パートの重要な絵を見やすく再掲した
ページがあって,それをまとめると実質30ページくらいですか
(1章4p,2〜6章各6p,計34pなんですけど,
 顔や手の輪郭線を四角で表現した絵のページもあって
 具体的なシーンやポーズを描きたいときの「お手本」には
 できませんからね)
漫画の描き方本って,けっこう「1点千円くらい?」みたいな
学生とはいわない一応プロだろうけどバイト仕事的なちょいへたカットで
埋め尽くされたものが多くて,その点ではマンゼミの作画例ページは
連載プロの斉藤むねお先生の手によるもので非の打ち所がありません。

実際模写して練習するのは,
上手くなるために描くというより描きたいから描く,
今描いている漫画で必要な絵だから描くという場合がほとんどなんで
忙しいというのは事実とはいえ言い訳なのも確かですけど
これをゼミナールの指導どおりに練習するってのは,私はやれません
必要な絵を他の本や資料なども含めた中から探してこの本にあれば
それを練習することになると思いますし,
女の子のかかと落としの絵(p97)とか描きたくなったら模写すると思います。

私はこんな感じですが,若い子とか素直さと気力のある人が
これを買ってちゃんと作画練習やっていったらすごく上達すると思いますよ。

ただ,本書で「漫画を描く上で気をつけるべき点を全部書くとしたら
何万ページあっても足りない」と書かれているように
この1冊で描かれている内容は,漫画の絵の部分の,
デッサンで心がけるべき点だけなんですよね。
これ1冊だけではやっぱりプロデビューとかは無理だな(;^皿^)
これを読んでプロになれる人もこれから出てくるでしょうけど
それはもともと力を持った人ですよ。

そもそも「中学生でもわかる」と書いてますけど
この本を手にとる時点でけっこう既に「もってる」人に
限られてくるんじゃないかなと思いますね。
たとえば人に薦められるとかでも,そういう知り合いを持つこと
これが面白い,役に立つと薦めた人に思われる人間であるという点で。
ヴェルタースオリジナルをおじいちゃんに与えてもらえる少年のように
特別な存在なんですよ。この本を読んでよかったという人は。

というわけで,この本を読んでプロデビューして
自分に才能があったことを証明しよう!(??)


『マンゼミ』はこの人体デッサン編の後,背景・パースについての
解説がジャンプSQ誌連載で続くわけですが,それの単行本化は
この本の売れ行き次第という状況のようです。
皆さん,買っておきましょう。


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本マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)
手塚治虫/光文社
※今も持ってます(私が持ってるのは光文社「カッパホームズ」版ですが)

本萌えキャラクターの描き方 顔・からだ編
ホビージャパン
※マジこっちも今からでも買おうかな…萌えっつーか普通にかわいくキャラを描きたいんで
posted by ドージマ・ダイスケ at 00:53| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【おすすめ本】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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