2011年06月05日

手塚治虫文化賞2011贈呈式行ってきました

さて昨日のエントリで予告してました
漫画賞の贈呈式,行ってきた話を書きます。

5月下旬に都内某所で行われた今年の手塚治虫文化賞,
第15回の今年は次の作品,作者の先生方が受賞されました。

マンガ大賞は,
『JIN−仁−』(集英社)村上もとか先生
『竹光侍』(小学館)松本大洋先生、永福一成先生

と,ともに江戸時代の日本を正反対の精緻でエンタテイメント性の高い
作風で描ききった両作品のダブル受賞。

新生賞は,大賞の一次選考で同点1位,
最終選考で惜しくも大賞は逃したものの
デビュー作にして物語・作画・キャラクターの三拍子を完璧に備え
非出版社系の漫画誌に確固たる地位を築く牽引力となった
荒川弘先生『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)
が受賞。

短編賞は,
その濃いキャラクターたちが繰り出すキレのよいギャグで
サラリーマンマンガの先頭を走り続ける
山科けいすけ先生(『C級さらりーまん講座』)
が受賞。


かわいい第15回手塚治虫文化賞贈呈式(主催社サイト)


110527 村上もとか先生.jpg
晴れ『JIN−仁−』の村上もとか先生は,記憶に残る最も古い漫画との接点は,4歳くらいの頃に近所の畳屋さんの縁側で文字も読めないながら夢中になって読んだ手塚先生の本で,漫画家デビュー後『六三四の剣』で小学館漫画賞を受賞したとき,手塚先生も『ひだまりの樹』で受賞と,漫画とともに歩んできた自分の人生のポイントで手塚先生との接点があったとコメント。
1週間後に還暦を迎える(ということはもうすぐ手塚先生の年に追いついてしまうんですね…)とは思えない若々しく知的なたたずまいで,まるで俳優さんのような絵になる姿。選考委員の永井豪先生が「医学の知識・歴史考証・そしてタイムスリップというSF的要素と,勉強しなければならない要素が非常に多い,ハードルの高い作品。挑戦するだけでもすごいと思うのに娯楽作としてのレベルを維持して描ききった」と大絶賛した作品は,担当編集に紹介してもらった3人の専門家との密なやりとりの結果生み出されたとのこと。今の時代に存在しない風景を描く苦労についてたずねられると,「古い写真を見るのが好きで集めている。今と変わらないものを見つけると小躍りするくらい嬉しくて。この時代に生きてきた人たちが今生きている私たちと同じように喜び,悲しみ,考えていたことを漫画で伝えられたらと思って描きました」

贈呈式後の永井先生とのインタビューでは,村上先生の描く女性が色っぽいとの指摘に「小6のころ,ウランちゃんの絵をクラスメイトに描いてあげたらすごく喜ばれ,いろいろな物をもらえたのが,絵を描く喜びと漫画を仕事として意識したルーツ。特にパンチラを描くとすごく好評で(笑)」と思わぬ方向へ話が盛り上がる一幕も。


110527 松本大洋&永福一成先生.jpg
晴れ『竹光侍』松本大洋先生初の週刊連載・時代劇・原作つき作品ということで,原作者に大学の漫画研究会で2年先輩だった永福一成先生を指名して二人三脚でつくりあげられた作品。大学の新入生当時から「漫画家になる」と公言し最初に描いた作品が受賞,あれよあれよとデビューしていった松本先生が漫画家としては先輩で,永福先生は松本先生のアシスタントを勤めていた時期も。捕物帖・お家騒動・腕利きの浪人など松本作品では出てこないような,「あらゆる時代劇の定番を盛り込んだカタログのような」原作で傑作を生み出した永福先生は感謝のコメントで「松本大洋が自分を指名してくれたから生まれた作品」とパートナーへの感謝を強調。松本先生も「描くのがとても楽しくて,いつまでも描いていたい,終わりたくないと思った作品」と感慨を語っていました。

贈呈式後の中条省平先生とのインタビューでは作品づくりの過程のほか作画についても興味深い話が次々と。
原作は小説形式で松本先生の元へ。永福先生はもともと漫画家なのでネーム(絵コンテ)形式などでも書けるのだがそうすると印象が固まってしまい自分で動かせなってしまうから。「字映えするものと画映えするものがあると思うので,演出面を楽しもうと。ただし自分が変えたところはすべて見てもらった」「違うなんて言ったことありませんよ(笑)」
『竹光侍』は作中では特定の時代が示されていないものの,設定では年代がきっちりと決まっていて,描かれている建物や衣装,道具などはその時代に存在する物だけが描かれているという。永福先生が以前描いた時代もの(『鉄騎馬 メタル・ホース』「バイクに乗った番長が江戸時代にタイムスリップする話なんですけど」)で考証をお願いした同年代の専門家に電話して依頼。マンがのことがわからないといくら知識があってもうまくいかないとは村上先生とも一致した指摘。
中条先生,日本文化は『遊び・飾り・アニミズム』と評されていて,松本先生の絵にはそれが揃っていると指摘。絵の装飾性の高さについては「やりすぎかなと思うこともあるけど,やっちゃうんですよね…すごいと言われたいので(笑)。担当に『やっちゃったな…』って顔をされるんですけど」。動物キャラは原作にはない松本先生のオリジナル。永福先生がそれを原作にフィードバックして喋る馬のエピソードを入れたら,1コマしか使われなかった(;^_^)という話も。近年の製版・印刷技術の進歩で薄墨の濃淡が使えるようになり『竹光侍』では画用紙に墨で描くスタイルに。「僕は絵を描くのに(スクリーントーンを)貼るってのがどうも耐えられなくて。あれがなければ僕の人生もっと幸せなのにと思ってた」画材は漫画の定番とされるつけペンではなくミリペンを使用。週刊連載では背景などの作画にアシスタントを数人雇うことが多いが『竹光侍』はすべて夫婦2人だけで描き上げたとのこと。「家の片づけもできなかった…ネコにえさやるのがやっと。(散歩の時間は?)それは担当さんに頼み込んで毎日2時間確保しました」


110527 朴ロミさん.jpg
晴れ新生賞受賞の『鋼の錬金術師』荒川弘先生は,第二子ご懐妊とのことで贈呈式は欠席。
代理として映画公開も控えているアニメ「鋼の錬金術師」エドワード役の朴 王路美(「ろみ」の「ろ」は本来は王へんに路)さんが登場。「会場で非常事態になっても困りますので涙を呑んで欠席させていただきます」「子どもの頃の自分に手塚先生の賞を受賞することを教えてあげたら仰天することでしょう」と荒川先生のコメントを代読,「華のある素晴らしい方ですのできっと会場を盛り上げてくれることでしょう」との指名に応え,エドの声で「この作品にかかわってきたみんな,そして応援してくれたみんな,ありがとなっ!!」と感謝のコメントを響かせてくれました。

「鋼の錬金術師」エド、手塚文化賞贈呈式で「ありがとなっ!」(asahi.com)
式後の取材で語られたオーディション時のエピソードなども。



110527 山科けいすけ先生.jpg
晴れ短編賞受賞の山科けいすけ先生は,先生の作品中には絶対登場しないような風貌(けっこう長身)で非常にニュートラルなたたずまいで登場。
「漫画を読むのは好きだけど,描くのはいやでいやで,自分には向いていない,やめたいといつも思っていた」「漫画家に向いていない自分が,文化という自分に向いていない賞をもらう。
 …向いていない仕事で,向いていない賞を貰う。
 …漫画的だなぁ…。
 こうなるとまんざら向いていないこともないんじゃないかと思えてきました」
と揺るぎないキャラを発揮,会場を沸かせていました。
奥さんの森下裕美先生も『大阪ハムレット』で4年前に受賞,夫婦での受賞おめでとうございます!


といった,今年も面白くてためになる?贈呈式とトークイベントでした。

それにしてもねぇ…
出席された先生方,さすがびしっと決められてました。
お召し物のスーツ,ドレスも見るからに立派で,髪も顔つやも隙がなく。
こりゃあ…各賞の副賞,100万円とのことですけど
ふだん身なりに無頓着な人間がいきなり選ばれたりしたら
賞金の何割かは衣装や髪のカット・セットにね,
って感じだな…と思ってしまいました。
荒川先生も代理の朴さんにだいぶ包んだんだろうな
(友達のノリで「よろしく♪」ってわけにはいかんよね)
なんて。何考えてんだ一体。
貧乏性の自分にとって公の場とは何か,
いいおっさんのこの歳になって改めて勉強になりました。

こんな話でオチにしてはあまりにもなんなので
もうちょっとだけ。

この賞では毎回,手塚眞先生が式の冒頭でスピーチされるのですが
その中で言及されたように
震災で中止も危ぶまれた同賞が無事に選考・選出され
すばらしい作品を表彰することができたのは
本当によかったと思います。

会場ではチャリティーとして同賞オリジナルのピンバッヂ
特別販売(過去の贈呈式記念品の在庫処b)が行われ,
私もブラックジャックと火の鳥の2つと交換で千円寄付しました。
110527 文化賞パンフバッヂしおり.jpg
アトムと手塚先生のツーショットピンバッヂは即効で品切れ,
お人形座りアトムのピンバッジも次いでなくなってました。
(ヒョウタンツギは去年の贈呈式の記念品,
 ブッダは今回の記念品。映画も上映されますし記念展が行われてますしね^^)

あと,受賞4作品をあしらったオリジナルしおりも
募金協力のお礼にいただきました。


と。これだけ書くのにまた時間かかっちゃったけど
(貧困なボキャブラリから適切な言い回しをひねり出すのに
 文章に時間がかかるのは仕方ないけど
 イラストや写真の処理でやたら時間がかかるんだよな…
 本当もったいない)
さ,自分の原稿やるぞ!



わーい(嬉しい顔)晴れ式全体のより具体的でわかりやすいレポートがこちらのブログで読めます。
次項有「祝!荒川弘先生 手塚治虫文化賞 新生賞受賞 & 第二子ご出産予定〜!」(歌猫blog跡地)


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posted by ドージマ・ダイスケ at 14:10| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ド素人日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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