2009年03月01日

【おすすめ本】『ワンダフル・ライフ』と火の鳥未来編

【bookな?日曜日】
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ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
スティーヴン・ジェイ グールド
早川書房 →Amazon

さて,今回紹介するのは
スティーブン・ジェイ・グールド博士の名著,
『ワンダフル・ライフ
バージェス頁(けつ)岩と生物進化の物語』

サブタイトルにもありますように,
カナディアンロッキーはバージェス山中,
古生代初期・カンブリア時代の地層から出土した
バージェス頁岩に見られる奇妙キテレツな形をした
水生動物たちの化石について,
その発見と解釈を巡る研究ドラマを
すごくディープに掘り下げて語り尽くした1冊。

生物の教科書・参考書や生物進化の本では
当たり前のように描かれている
アノマロカリスやウィワクシア,オパビニアに
ハルキゲニアといった生き物たちが,
化石発見から長きにわたって誤った復元をされていたり
まるで見当違いの分類をされていたりしてたんですね。

ひらめきそれが,ウィッティントン,コンウェイ・モリス,
ブリッグスといった科学者たちの地道で粘り強い検証で
バージェス動物たちの内部構造まで含めた生前の姿が
いきいきと甦ることになったその復元過程,
そしてなぜ彼らが登場するまで
この大発見が不当に誤った認識のまま放置されてきたのか
ドラマチックに語られています(その根本的な原因は
バージェス頁岩化石の発見者にして当時の古生物学重鎮
かつ傑物行政官であったウォルコットが,あまりに多忙のため
化石の研究で圧倒的優先権を持ちながら
丹念に化石を検証する時間がなかったということと
彼があまりに保守的であったことということなのですが
著者グールドはウォルコットが残した公私にわたる
膨大な記録を丹念に検証し,彼の人物像を時代背景とともに
浮かび上がらせ,歴史的教訓として描いています)

サンクタカリスなどの少数の例外を除けば
バージェス動物群のほとんどの生物種は
現生の動物たちのいずれの分類群にも属しない,
それも,綱はおろか,ものによっては門
(「節足動物」「軟体動物」など)のレベルで
新しいグループを設けないといけないくらい独特の形態である。
にもかかわらずウォルコットはことごとく三葉虫類や
甲殻類など既存の綱,あるいは説明の付かない動物を
「三葉虫様綱」なるものに便宜的にぶち込んだ…


犬そんなことを一方的に書かれても素人にはちんぷんかんぷんですが
なぜそういうことが言えるのか,この本では節足動物の分類基準から
きちんと説明してくれています。


その基準がわかれば,
なぜカブトガニがダニやサソリと
同じクモの仲間で,ダンゴムシが甲殻類なのかが
すっきり納得できます!すごく勉強になりました。

ペンで,この本で語られる大きなテーマの1つが,
当時の生物は,基本構造において今の生物よりはるかに
多様性に富んでいた
ということ。

これはつまり地球の生物の歴史は,進化の歴史というより
絶滅の歴史であり,少数の原始的な生物種から多数の
複雑化した生物に放散・発展していったのではなく,
既にさまざまな環境に適応した多数の生物の大部分が
絶滅していき,たまたま生き残った少数の系統が
子孫を増やしていくということの繰り返しだと。
「非運多数死」ということばで表現していますが
この観点をきちんと教えていこうとすれば,
今でも生物の教科書のほとんどすべてがまちがいということになってしまいますね。

どんっ(衝撃)ここで,『火の鳥未来編』です。
科学文明のピークを迎えた人類が自然を汚染しまくり
地下に引き籠もらざるを得なくなった挙げ句,核戦争で絶滅。
火の鳥の力で,唯ひとり,地球が復活するまで永遠に
生き続けることを命じられた山之辺マサトは
さまざまな試行錯誤と挫折ののち,
人類が再び誕生まで地球の歴史を見つめ続ける−

この作品を小学生時に読んだ私に衝撃的だったのが
恐竜の繁栄まで再現された後,地球を支配したのが
哺乳類ではなくナメクジだったという展開。
特に,ナメクジたちも文明発展の末,民族間戦争を起こし
滅亡してしまうのですが,最後の1匹の最期,
「死んだ」というナレーションというかト書きが
なんともいえず心にインパクトを与えたものでした。

このナメクジ文明のエピソード,
先日のNHKBS2での特番で放送されたアニメ版
<2004年にBS-hiにて放送。25分×2回構成>
では完全カットされてるのですけど
グールド博士の
“進化の歴史のテープを巻き戻して再生すると
 同じ生物が勝者となり繁栄する保証は全くない”
という「非運多数死」の説からいくと
ここのところこそが手塚治虫先生の
科学の予言者としての力の一端なんですよねぇ。
「火の鳥未来編」は,私が生まれてさえいない1967年が初出,
『ワンダフル・ライフ』原語版の20年前であります。

そんなこんなで
とてもエキサイティングで説得力を感じる魅惑の1冊でありますが
もちろん『ワンダフル・ライフ』で展開されている持論は
グールド博士の説であり思想であり
進化論については他にもいろいろな考え方があります。

そもそも,この本で紹介されている主役の3氏の1人である
コンウェイ・モリス博士からしてグールド説を批判してたりしますw

また,日本語翻訳版が出た1993年の時点で
ハルキゲニアの復元図が上下ひっくり返るなどの
学説の転換があったりするわけで,古生物学・進化論にせよ
進化・更新はとどまることがなく絶対の真実とは全く限りません。
そのような,グールド博士の原稿の外側,
この本自体をめぐる話が解説された訳者文庫版あとがきを
読むのもまたそれだけで読み応えがあって面白いですよ。


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次項有その他,参考書・問題集に関するエントリーを読む

ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)
キム・ステルレルニー
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火の鳥 未来編 [DVD]

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訳者略歴: 渡辺 政隆(わたなべ・まさたか)
1955年生まれ。専門は科学史、科学コミュニケーション、進化生物学。東京大学大学院修了。文部科学省科学技術政策研究所総括上席研究官。サイエンスライター。著書『DNAの謎に挑む』(朝日新聞社)、『シーラカンスの打ちあけ話』(広済堂出版)など。訳書 デズモンド/ムーア『ダーウィン』(工作舎)、ケインズ『ダーウィンと家族の絆』(共訳、白日社)、ラビノウ『PCRの誕生』(みすず書房)、サックス/グールドほか『消された科学史』(共訳、みすず書房)など。
posted by ドージマ・ダイスケ at 23:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【おすすめ本】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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