2008年07月29日

Nスペ「南米のチンパンジー」?!

28日はNHKスペシャルで
『南米の驚異 道具を使うサル』という特集をやっていましたね。

NHKスペシャル|南米の驚異 道具を使うサル
  ※NHKオンライン トップページ

南米に住むフサオマキザルが,石を使って堅いヤシの実を割る行動を行っていた,これはつまり(類人猿ではない)ふつうのサルでありながら道具を使うという衝撃の発見が成されたという内容でした。

まあ,ヒトとそれ以外の動物を分ける特徴として「道具を使う」は使えないというのは言わずとしれた話で,チンパンジーがシロアリ釣りをする例は言うに及ばず,ラッコだって貝を割るのにマイ石を使いますし,鳥類であるキツツキフィンチでさえ小枝を使って穴の中の虫をほじくり出して食べるわけで。
とりあえずヒトと他の動物を隔てる違いとして「二次的道具(道具を作るための道具)を作る」は今のところ挙げてもよい一線としてキープされている状態ですね。

ですから,サルが道具を使うって,今さら…
とも思っていたのですが
そういえばニホンザルは決して道具を使わない。
このフサオマキザルも,アメリカで100頭余りが「介助ザル」として活躍するなど,訓練すれば複雑な道具の使用もマスターできるものの,野生の状態で道具を使っている様子が報告されたのはこれが初めてだったんですね。

しかし,番組を見てみるとなかなか興味深かったですね。
個体によってヤシの実を割る場所(台)にいくつかの流儀があったりとか
フサオマキザルは自分の子など他の個体にヤシの実割りの方法を教えない,それは当然としてエサを分けてやることもないんでそうですね。だから小さい子ザルは他の木の実で食いつなぎながら必死で大人ザルのやり方を見て技を盗むとか。

こういった動物紀行もの的な映像に加え,
「重い石を持ち運ぶことで二足歩行に必要な筋肉が鍛えられ
 直立できるようになった」

という仮説が提出されることでがぜんストーリー性を帯びてきます。
小さいサルが堅いヤシの実を割るには,
重い石を持ち上げて,体重を乗せて振り下ろす必要があります。
ヤシの実を割ることができるサルはだいたい体重2kg以上に成長した大人なのですが,例えばヤシの実を割るのが上手い2.2kgの個体は,1.85kgの石を使っていました。体重の約8割。私で言えば約1俵ですよ。こんな重い石を持ち運ぶために背筋や足の筋肉が鍛えられ,さらにはヤシの実割りをするときの振り上げでも背筋と太ももの筋肉が使われると。上手なサルでも一発ではヤシの実を割れませんでしたし,そうでないサルはそれこそヤシの実を転がしながら何度も何度もトライアルを重ねてましたから,そりゃ鍛えられもするだろうってことで,ヤシの実割りの風習のある個体群とそうでない個体群とでは二足歩行する時間が格段に違うそうです。

ヒトと一番近いとされるチンパンジーが進化の過程で別々の生物に分岐したとされるのが約700万年前,それよりずっと古い3500万年前に分かれたとされる系統的には遠い存在のフサオマキザルに,道具の使用や直立二足歩行などをヒトが獲得してきたのと同じ道を歩んでいるかのような様子がうかがえるというのは面白いですね。進化論の話をするときに「ヒトはサルから生まれた」というフレーズにインパクトがありすぎるためにこれがひとり歩きして「だったらサルはいつかヒトになるのか?」「違う。現生のヒトとサルは共通の祖先から生じたというだけで,今居るサルは何万年たってもヒトにはならない」なんて問答が必須のものとなっている感がありますが,今のヒトにはならないにしても,別系統から似たような「人類」が生まれてくる可能性は示したってことになるんでしょうかね?

それにしても,立って歩くのに必要な筋肉が鍛えられて発達するから立つようになった…
って,獲得形質の遺伝が否定されている前提では,今いる個体群のサルがどれだけ上手に歩いても道具を使っても,次に生まれてくる世代の子たちは遺伝的に中立なわけで,生まれつき必要な筋肉が発達した個体が生まれるのは偶然を待つしかない,かつ,その個体がちゃんと育って劣っている個体よりたくさんの子を残していかないといけない…。いつになったら直立二足歩行が普通の動物に進化するんだよ?!ともどかしく思う気持ちがしてしまいます。
ガラパゴス諸島のウミイグアナはエルニーニョ現象などの気候変動で食物環境が激変した際,たかだか10年もたたないうちに体長が縮まるという“進化”を見せたそうですが,動物の進化って案外速いんでしょうか?


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ヒトはいかにして生まれたか (ゲノムから進化を考える (5))

尾本 惠市/岩波書店

ヒトは食べられて進化した

ドナ・ハート,ロバート W.サスマン/化学同人

人体 失敗の進化史 (光文社新書)

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ラベル:霊長類 進化 生物
posted by ドージマ・ダイスケ at 02:36| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ◇生物番組・ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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